taoyaka通信



2018.10

~ 「豊かな機能」意義の再確認 ~


当社は、特殊な気候風土である日本国に建つ家々が、最低限持っていて欲しい能力を「豊かな機能」という名称で推奨させて頂いている。この事は、HPや会社概要書等でしつこく申し上げているのだが、なかなか浸透・ご理解して頂いていないので、当社がそれを推奨する意図を、ここで再確認させて頂こうと考えます。 ※本書で「豊かな機能」の詳細な説明は省きますので、まずは、今一度、当社HPや会社概要でご確認頂く事をお願い致します。

当社は「豊かな機能」があれば他に何も必要無い、と申し上げているのでは決して無い。ただ、床暖房・断熱性・気密性・新しい耐震金物・太陽光・オール電化等の小手先の住宅機器の議論が、住宅の入口になっている昨今に対して疑問を呈しているだけである。もちろんこれらの技術も大変大切で、当社も多く採用させて頂いている。ただ当社は、これらの事は枝葉の技術と考え、まずは最も大切で基本的な事から議論に入るべきだと提唱させて頂いているだけである。それが当社の推奨する「豊かな機能」だ。

こんなご質問を頂いた事がある。「そんな基本的な事はどこの住宅会社でもやっているのでは?」。いやいや、残念ながら、驚く程なされていない。なので、当社は大きな声で騒いでいるのだ。周辺のお家を見回して頂きたい。必ず下記の様な家があなたの周りに多く見つけられるはずだ。半分以上の居室が絶対に北側に配置されてしまう真四角の家。真四角だからこそ敷地南側に建物が寄り、隣地からの影が大きく掛かった家。南側の大型窓の上に庇や屋根が無かったり、あってもそれらの出幅が小さく意味を成していない家。南側道路からLDKの大きな窓が丸見えの家。こんな住宅ばかりである。周囲から見ただけで、「豊かな機能A・B・C・D」が成されていない事が本当に容易に判別出来る。

では「豊かな機能」という物を、皆さんはそもそも欲していないのだろうか?という疑問が浮かぶ。否。そんな事は無いはずだ。多分、気付いていないだけだ。少しだけ忘れているだけだ。心の奥底に忘れている事、身の回りにふんわり漂っているのに日頃は見えない事、歴史や文化の集積から発生する、日本人であれば、あまりに当たり前だが本当に大切でかけがえのない事、それらを一度、再確認して頂きたい、という事が今回のテーマである。


「 1.日本の特異性 」

前頁にて、日本人には日本人にしか共通理解出来ない特異で愛すべき趣向が存在すると述べた。それらはどんな事であろうか。

まず、日本人の全ての文化・技術・趣向を覆い尽くし、また源流となる思考が「自然に対する畏怖」であろう。日本は世界に類を見ない自然災害多発国である。昨今、自然災害が多発しているから述べている訳では無い。大いなる太古から変わらず発生している。周りを海で囲まれ、南北に細長い国土で、温帯モンスーン気候。国土の下には、今なお当然の様にマグマが存在する。今の様な技術や知識が無い日本人は、農耕民族であった事も相まって、そんな自然災害に多くの事を左右されてきた。そんな古代の日本人にとって自然=神であり、世界には珍しく、仏教等の一神教以外に、あらゆる自然物を崇拝するアニミズムと呼ばれる原始信仰が定着している。太陽、星、月、高く険しい山々、果てが見えない大海原、巨石や大木、キツネやたぬき代表される動物達。各所で今も行われるお祭り、お月見等の行事ごとの発祥は全て神々へ祈るものであった。日本人にとって自然とは、克服する対象では無く、畏れ、敬い、寄り添い、愛でる対象であった。特に西洋では、自然は克服し、ねじ伏せる対象であったので、日本国の自然に対する精神性は特異なものだと考えても差し支えないだろう。

自然環境の違いは、建築材料の違いを産み、それは建築工法や建築様式の違いを産んだ。地震が多く、木材豊かな日本では、揺れをある程度見越して計画する木造建築が発達。木材が少なく、地震が少ない国には石やレンガ等による組積造。日本の様に、風も吹き雨も多い国では軒の出が深く、雨も雪も少ない国では浅い。湿度が高く蒸し暑い日本では、壁が少なく建具により仕切り、開放して風を通す。湿度が低く、そもそも晴れた日が少なく、寒い国では、窓も小さく、仕切られた個室が多い。周りが地続きの敵国だらけでいつ責められるか分からない国では、分厚い外壁の組積造が好ましいし、日本の様に、周りが全て海で囲まれた単一民族国家ではペラペラの紙や板や土で出来た建物でも良かった。

自然環境や建築様式の違いは、人間の性格や文化にも影響を及ぼす。農耕民族は、皆で協力し、和を尊び、狩猟民族が個人主義になるのは必然。障子やふすまで仕切られた建築では、空気を読んだり、遠慮したり、忖度する人間性が産まれる。海に囲まれた逃げ場の無い国土では、人と争う事は多大なリスクで、泣き寝入り、長いものには巻かれろ、右にならえ、出る杭は打たれる、といった文化・精神形成が、長年の歴史の集積により出来上がった。

日本を取り巻く自然環境は、多少の変化はあっただろうが、今も昔も大きくは変わっていない。一方、人間や人間社会は大きく変化した。技術が急激に進化し、便利な世の中になった。それら技術進歩に加えて、特に日本は、欧米化という変化も伴った。2000年積み重ねてきた全て、目には見えない精神性や文化等も含め、日本は数十年の間にそれらを急激に変化させてしまったのだ。


「 2.何が健全か? 」

皆さん、幼少期の自分のお子様に求める事とはどんな事でしょうか。私は、とある心療内科の先生の助言を頂き、自分の子供達には「毎日元気に食事を沢山食べられる事」「しっかり寝られる事」「しっかり排便が出来る事」この3つを「子育て3箇条」として接して来た。簡単な様でなかなか意味深い。精神的に安定し、毎日リズム良い生活を送り、心身が健康で無いと歯車が狂い、出来ない事が発生する。子供が大きくなるにつれて、親の要求は増えていく。親達は子供の枝葉の技術(かけっこが早いとか、勉強が出来るとか、元気よく発表が出来るとか、友達が多いとか)(もちろんこれらも大切な事だが)に注目し、いつの間にか本当に基本である「子育て3箇条」を横に置いてしまう。そして時に、本当に大切な心や体の揺れ動きに気付きにくくなってしまう。

次に「家庭での食事」を例に取ってみる。質素でも構わない。きちんと食器を使い、家族にそれなりの会話があり、「いただきます」「ごちそうさま」と言い、温かい方が美味しい物は温かく、冷たい方が美味しい物は冷やして、命にきちんと感謝し、綺麗に残さず食べる、これが普通で健全で健やかな食事だ。同じエネルギーを摂取し、体が活動すれば良いという発想なら、別に食器を使わず、立ったまま鍋から直接食べても良いし、「いただきます」とも言わなくて良いし、命に感謝せずどんどん残しても良いし、極端に言えば全てサプリメントでも良い事になる。冷凍食品やコンビニ弁当は何となく味気無く、ちょっぴり不格好なお母さんの手作り弁当の方が旨いと感じるのは私だけだろうか。

ランチで毎日行くなら、気取ったイタリアンより、頑固だが情に厚いおじちゃんと、少しドジで話好きのおばちゃんがやっていて、栄養バランスが良く、温かい親密感のある小さい食堂が良い。

風邪程度で病院にいくなら、あまりに最先端でピカピカしていて、看護婦さんは若くて綺麗で、対応は完璧だが杓子定規で冷たく事務的な病院より、適度に清潔であれば、看護婦さんはおばちゃんで、温かくフレンドリーで、先生は穏やかで一人一人の患者の話をよく聞いてくれる、そんな町の小さな病院の方が落ち着く。

あまりに過敏である事も問題だ。1日に10回もシャワーを浴びたり、衣服やタオルを必要以上に洗濯したり、フローリングのホコリを常にコロコロで掃除したり、人の事や、他人からの評価を過度に気にして、自分を否定し、他者を過度に羨み、様々な事に不満を持ち、長々と過去を悔やむ。そんな事は不健全だろう。

普段の生活は、健全で穏やかである事。無理せず、背伸びしない事。個性溢れ、他者の個性を許している事。質素であっても豊かである事。汗や涙を普通に流せる事。無い物を欲する事より、ある物に感謝する事。「家庭」はそんな風が良いのではないか。家庭の雰囲気がそうあって欲しいが為に、本当に微力かもしれないが「家」のしつらえもそうありたいと、心から、そう想うのだ。


「 3.対症療法と、根治療法 」

大都会と田舎では違う。大都会では敷地が狭く、周りには背の高い建物が多く、車通りが多く危険で、近所付き合いも希薄で、プライバシー問題は防犯対策とも絡み合い、ストレスも多大だ。都会には都会の住宅のしつらえ・創り方があるだろう。しかし、本書を読んで頂いている方々は、ほぼ田舎、地方都市と言われる場所に家創りをお考えだ。都会と同じスタイルでは無く、面積的にも精神的にも、もう少しゆったり住んだらどうだろうかと感じる。日本中で流れるCMに誘導されて、大都会と同じ様な住まい方が良い事だと、日本人的に「右へ倣え」していないだろうか。

現在の住宅事情を総じて見回してみると、精神的に豊かか?。穏やかで、健全で、伸びやかで、大らかか?。なんだか窮屈そうだ。広さの事では無い。精神的にだ。不健康に感じる。田舎なのに、外は良い風が爽やかに吹いているのに、窓を締め切って、厚手のカーテンも閉めて、エアコンと床暖房と空気清浄機と加湿器を付けて、閉じこもって携帯をいじってないか。そう言えば、最近は閉じこもる為に便利な機器ばかり流行っているように感じる。

いや、別に、急にアウトドア派になれと言っているので無い。又、自然(=神)に祈れと言っている訳でも無い。ほんの少し窓を開けて、太陽と風を入れ、雨や風を楽しみ、虫や鳥の声を聞き、豊かな四季を愛でて、旬の食材を楽しんでも良いのではないかと申し上げているのだ。前記した様に、それらを楽しみ、それらに癒やされるDNAが、僕ら日本人には絶対に携わっている。 ほんの少し自然を楽しみ、自然の恩恵を受け、少しだけおおらかに住まう為の住宅の装置こそが「豊かな機能」だ。

そもそも昨今の、流行の住宅機器は「豊かな機能」が行われていない住宅を、なんとか補填する為の物ばかりの様に感じる。全居室南側採光を行わず、北側の寒い居室の為の床暖房。適切な屋根や庇が無い為の過度の断熱材やペアガラスサッシ。通風が適切に行われない為に必要な除湿器。総じて電気機器に頼ってしまう為の電気代増加に対する太陽光パネル。プライバシーが確保されていない為のカーテンやシャッター。などなど。。。 全てが無駄だとは全く思わないが、まずは「豊かな機能」の考察を行った上で、補助的に導入すれば、全てが上手くいきそうな項目ばかりだ。医学でいうところの、対症療法と、根治療法の違いであろう。血がダラダラ流れていて、縫わないと血は止まらないのに、バンドエードを何度も貼っている様。こう書くと、残念で悲しい事を通り越して、なんだか滑稽だと思いませんか。。。。

健康で逞しい心身である事がまず基本で、暑ければ窓を開けて服を脱げば良いし、辛いことがあれば大声で怒ったり泣いたりすれば良いし、楽しければ皆でゲラゲラ笑えば良い。そもそも、猫も杓子も床暖房・太陽光と騒いでいるのは、ここ最近からで、僕らが子供の頃は身の回り全ての物・雰囲気が、もう少し、豊かで、ゆったりで、そして逞しく、自然であったと感じるのである。。


「 4.なぜ、同業他社様はやらない? 」

「豊かな機能」が良いものであるなら、なぜ、多くの量産型住宅会社様は、「豊かな機能」をきちんと盛込んだ家を創らないのか?。大会社がやらないのだから、taoyakaみたいな小さい会社が言っている事はウソなんじゃないか、そんなご意見・ご質問を頂くので、お答えしたいと思います。※もちろん全ての量産型住宅会社がそうだと言う訳ではありませんのであしからず。。。。。

回答を申し上げる前に1つ踏まえておくべき点がある。前提条件として「豊かな機能」を完遂する為には、「完全な自由設計」である必要がある。当然である。敷地もお客様もは1軒1軒違う。それに合わせて「豊かな機能」の考えを臨機応変に落し込んでいく事は、数パターンの中から選ぶ様な住宅では不可能だ。量産型住宅会社様の「自由設計」の多くは、自由でもなんでも無い事が多いので要注意だ。「自由設計」と謳っていながら、実は引出しにしまってある数パターンの中から選んで取り出し「あなたの為だけのオリジナルプランです」と提出するという具合だ。その様な会社の住宅はもちろん「豊かな機能」を完遂しているとは言えないので要注意だ。では、上記の問いにお答えしましょう。

■回答1。そもそも、量産型住宅会社の多くは、お客様に取って良い家を創ろうとしていない。その様な量産型住宅会社の目的は、「売れる家」を「1軒でも多く売る」事だ。■回答2。そもそも、量産型住宅会社の多くは、「敷地形状に合わせた家」とか「お客様の個性に合わせた家」とかいう発想が無い。日本中どこの敷地であれ、数種類の中から選ばれた規格品の家をポンッと置くだけである。■回答3。敷地やお客様に合わせた豊かな家を1軒1軒創っていたら時間も掛かるし、有能な設計者を沢山雇わなければいけないし、儲からない。有能な設計者ほど我が強く、個性的で、給料が高く、組織に属しにくいし、扱いも難しい。■回答4。なので、皆と同じ事を好む(右にならえ主義)日本人の特性に付け込み、不安を煽り、そうしないと変だと感じさせるCMやネット等の広告で、無知なお客様をイメージ誘導する。耳障りの良い住宅機器を前面に押し出す営業スタイルなら、建築の事をほとんど分かっていない新米の営業マンでも大丈夫♪。■回答5。そんな大企業は、官庁、政治家、経済○○会、銀行、マスコミなどと繋がり、景気を落とさない様に、個人消費を落とさない様に、納税額を落とさない様に全てが繋がっていて、政治家や大学教授や識者は、住宅の問題点や建築基準法の不備や矛盾点に関して、誰も問題提議しない(していてもマスコミは取上げない)。

上記がウソなら、何故、団地に建っている家々はみんな同じ様な無個性な家ばかりなのか?。なぜ、打合せもロクにしていないのに図面が出て来るのか?。それも1週間ほどの超短期間で(当社は数度の打合せを含めて、図面提出までに最低1か月要する)。

量産型住宅会社様の多くは「やれない」のでは無く、会社の利益を優先し、問題点を理解した上で、あえて「やらない」のだ。


「 5.あとがき。。。 」

今回は「住宅論」と言うより「日本人論」的な話になり、ついつい筆が進んでしまい、暑苦しかったなら失礼致しました(汗)。 当社の「豊かな機能」は、最近の量産型住宅会社様が取り入れていない思考なだけで、日本における建築の考え方の中では、本当に普通で、当たり前な事だと理解して頂ければ本望である。

建築だけで無く、なんだか最近の世の中の閉塞感、ギスギス感が大変心配である。政治や会社や世界情勢はさて置き、家庭だけでも、あなた個人だけでも、伸びやかで穏やかであって欲しい。その為の家であって欲しい。「おっ、今日はお月見か~。ママの煮た里芋は美味いな~。」とかなんとか言いながら、風呂上がり、開け放った窓から入る爽やかな秋風を受けながら、ビールの一杯でも飲んで頂きたいのだ。当社は、そんな、自然と少しだけ仲良くなれる大らかな家を創りたい。その為の「豊かな機能」だ。

もちろん、当社の「豊かな機能」だけであなたの家が出来上がる訳では無い。あなたには必要の無い項目、足らない項目もあるだろう。そんな取捨選択、優先順位をゆっくりお話する事が当社の家創りの入口である。家創りって、本当は凄く楽しいのです♪。

そんな「豊かな機能」をもっと体験して頂けるのが、当社開催、「住宅スケッチ体験会」だ。実際、自分でやってみると、「豊かな機能」により家の形状が出来上がって行く過程が良くご理解頂けるであろう。他社様では絶対に行っていない、自分でやってみるスケッチ体験会は、本当に、心からお勧めなのです♪。

最後に、谷崎潤一郎、日本人の根深い美意識・心模様を表現した、驚愕の名著「陰翳礼讃」から一節。「たぶん、あまりに日本の四季は美しく、人間が創り出す様々な物は自然に負けて、自然を引き立てる装置なのだろう」。うわ~~、完全に同意である。。



2018.04号

~住宅 リフォーム・リノベーション 特集~

「 1. 根幹となる価値 」

当社はリフォームもリノベーションも新築も得意としているので、どちらかを一方的にお客様にお勧めする事は無い。重要な事は、両者の特性をきちんと把握し、予算や将来性を加味し、家族にとってどちらが幸せかを深く検討する事である。由緒正しき古民家をリフォーム/リノベーションする様な特殊な付加価値がある場合を除いて、新築に比較して中古&リフォーム/リノベーションの魅力は「価格」であろう。
「本当は新築したいが予算が合わないので中古&リフォーム/リノベーションを選択する」という場合が多い。しかし、総工費だけで高い安いを比べるだけでは、真の豊かさの比較は難しい。リフォーム/リノベーションを「安さ」だけでは無く、「お値打価格で豊かに暮らしたい」という皆様に向けて、今回の特集をお届けしたいと思う。

中古&リフォーム/リノベーションが新築に劣る最大の欠点にお気付きだろうか。それは、家の大きな要素が変えられない、という事だ。 大きな要素とは、家の全体的な形、配置、向き、全体的な部屋の構成、階数、高さ、屋根の形状、主要な構造、地盤、基礎、等だ。これらは絶対に変えられない訳では無いが、変える事が大変困難であり、かつ工事費も掛かるので、そこまでやるなら新築を選ぶ事が多い。これら大きな要素を無視して、家の価値を図る事は難しい。家の全体的な形や配置は土地の有効利用や外構計画に、配置や向き、高さ、部屋の構成等は、家全体、各部屋の陽当りや通風等に、主要な構造や地盤は耐震性に、基礎の高さは水害等に直結する。それらは「表面的な価値」を超越する、家の「根幹となる価値」である事がきちんと理解されていないのではなかろうか。これらの価値を無視し、新築よりも中古&リフォーム/リノベーションの方が安いからという理由で選択する行為は注意が必要である。

上記の「根幹となる価値」は新築の場合でも重要なのだが、理解が浸透していない様に感じる。なので、「根幹となる価値」にこだわっていない残念な新築住宅が世間には溢れかえっている。 リフォーム/リノベーションで変えられない部分と変えられる部分を理解する事は、中古物件探しにおいての重要項目であり、又、その内容をしっかり腹に落とす事は、後々後悔しない為に必要な行為だろう。家族がどの様に住みたくて、何を優先し、何に妥協出来るのか。知識の有無が損得に繋がる。何事も、豊かな幸せは、深い知識と、愛情に基づいた考察により手に入れられると考える。


「 2.種類と前提条件 」

リフォームとリノベーションという言葉の意味を整理しておきたい。
◯リフォーム    :老朽化した建物の内外装を当初の性能に戻す事。
◯リノベーション:用途や機能を変更して性能を向上させ、又、その事により価値を高めたりする事。
2つの言葉を混同して使用されている方が多いが、全く意味が違う事に気付いて頂けるであろう。当社は、中古住宅をリフォームするだけでは無く、積極的に用途や機能を新たに付け加えるリノベーションを推奨させて頂いている。それは、前行で指摘した中古物件に存在する「根幹となる価値」の欠如を少しでも補う為である。新しく綺麗にするだけのリフォームより、新たな機能が付加されるリノベーションの方がお客様にとって可能性が広がるのではなかろうか。

さて、どの様な工事を行うかはさて置き、「どの様な中古を手に入れるか?」という大変難解な問題を解決しなくてはならない。 まずは、分譲か賃貸かの選択だが、予算やその家への動機によって変わってくる。家族構成の変化の予想が建てられない・いつ引っ越しするか分からない等の、短い間の仮住まいや、出来る限り低予算でというなら、最小限のリフォームを行う前提の賃貸中古物件で十分だ。しかし、出来る限り長く、しっかりとした安心・安全・生活の豊かさ等を欲し、予算が許容するならば、土地も家も分譲の中古物件&リノベーション工事をお勧めしたい。賃貸であれば、いつなんどき大家さんや不動産屋さんと不仲になるかもしれないし、リノベーションの可能性が狭まるかもしれない。土地や家が自分の財産になり、完全に自由に出来る分譲物件の開放感は格別である。

次に、どの様な形状・間取りの中古物件を探すかという問題だ。まずは、その家族の希望の抽出を行う。最初は敷地周辺に望む環境だ。都会が良いのか田舎が良いのか。実家からの距離を優先するのか。駅からの距離や学区など。次に、その敷地に建つ中古住宅への要望だ。どんな部屋が必要か・各部屋の広さ・駐車台数・庭の広さ・バルコニーやテラス・収納等。ここまでは専門家不在でも家族間で行える。家族でワイワイ楽しく話し合って頂きたい。

次は、不動産屋を巡り、具体的な物件を探し、現地を見れば良い。だが、ここからは専門家が必要だ。何故なら、その屋根や外壁はリフォームの必要があるか、リノベーションの場合なら、この壁は取り払えるか、窓は増やせるか等、その工事が可能かどうかは専門家で無ければ判断出来ないからだ。そもそも、工事費がいくら掛かるか見積りするには現地調査は必須である。専門家不在で現地見学&判断を行うと間違いが起こり、後々、工事範囲が広がり、工事費の増額に繋がったりするし、その中古物件そもそもの価値判断に狂いが生じる事にも繋がってしまう。専門家が物件見学に同行していれば、リノベーションの可能性が広がるばかりか、不必要な工事抑制にも繋がるし、その物件の根幹となる価値に対する意見も聞ける。新築も同様だが、物件見学に入る前に工務店選定を行い、その工務店を連れて物件見学・工事見積りを行う事を、当社が強くお勧めしているのは、こういっいた理由からである。


「 3.どんな工務店に頼むか」

リフォーム/リノベーションは新築よりも簡単だとか、新築が出来る工務店だからリフォーム/リノベーションも楽勝だ、という考えは間違っている。

新築とリフォーム/リノベーションでは、工事のやり方が同じでは無い。新築では、地盤改良から始まり、徐々に下から、躯体の内側から仕上げていくが、リフォーム/リノベーション工事ではそうでは無い。もちろん、工事手法が違えば、下請け専門業者の選定も違ってくるし、工期・予算も新築とは違ってくる。又、リフォーム/リノベーション工事では扱う中古物件のどの部分がどの程度痛んでいるか、工事・交換していくべきかという経験に基づく判断が必要であり、新築工事だけの経験ではその判断は難しい。「一日の長」。こんな言葉は皆が知っているのだが、何故か自分の事となると忘れがちで、失敗や境地に陥ると思い出す。だが、その時は既に手遅れだ。

又、「一部分だけの工事だから一種専門業者に頼めば良い」という考え方も非常に危険だ。ここでの一種専門業者とは建築をトータルで請け負う一式請負工務店では無く、例えば、大工業、電気業、水道業、クロス業etcという様に、建築施工業の中において1つの工種だけを専門に行う施工業者の事である。以下の例は当社のHPにも掲載させて頂いているが、その抜粋をご紹介する。
例えば「外壁に窓を付ける」。この作業でいくつの一種専門業者が必要か分かりますか?(以下、あえて細分化すると)。
◯サッシ本体を納品するサッシ屋さん。◯サッシの大きさに外壁に穴を空ける解体屋さん。◯サッシを取り付ける下地の木材を壁の中に入れる大工さん。◯外壁を補修したり、防水紙を入れる外壁屋さん。◯宅内のサッシの周りの木額縁を製作し、取り付ける大工さん。◯その木額縁に塗装を行う塗装屋さん。◯宅内の窓周りの仕上げクロスの補修及び張り替えを行うクロス屋さん。◯窓に合わせて、きちんとオーダーサイズのカーテンを製作し、取付するカーテン屋さん。
サッシを1つ取付けるだけでもこれほど多くの一種専門業者が必要なのだ。これら一種専門業者を従えて、複雑な工事を厳しい工期・予算でやりくりするのが「一式請負工務店(通称:工務店)」である。「サッシを付けるのであればサッシ屋さんに頼めばいい」という考え方は、時に重大な欠陥を産んでしまう可能性があるのだ。

又、「リフォーム/リノベーションの簡単な工事だから図面は無しで、見積りも口頭で!」という乱暴な業者は要注意だ。元請けの姿勢がだらしないと下請け工事業者の仕事もだらしない事が多い。図面や仕様書が無いと、証拠も根拠を無く、特に知り合いの一種専門業者とかは苦情を言い難く、お客様が泣き寝入りする事が多々生じる。最終的に気持ち良く工事も支払いも終われば良いのだが、いつも上手く行くとは限らない。全てを杓子定規に行う必要は無いが、きちんと丁寧に、手間を惜しまず、という姿勢は大切な事だと考える。建築は使用年数が長く、不具合はいつ判明するのか分からない。「安物買いの銭失い」。多少値段が高くとも、きちんと丁寧な姿勢の企業を選ぶ方が、最終的に得をする事が多い。


「 4.建築士が必要 」

軽微な工事であれば建築士は不要だ、という考えが世間にはある様だがそれは間違いだ。リフォーム/リノベーションの成功の為には、建築士しか出来ない以下の3点をしっかり押さえるべきだ。
①「既存との融合」。言うまでも無く、リフォーム/リノベーションは家全体を工事するのでは無く、既存を生かしながら工事する必要のある部分だけ工事すれば良い。深い検討も無く「全部直しましょう」という乱暴な会社は論外だ。長い間その家と共に暮らした家族達は、家に対して深い思い入れがあり、その気持を汲む事は大切な行為だ。残す既存部分と、新しくする新装部分のデザイン的なバランスを取る事は大変難しい。下手をすると家がデザイン的にバラバラになってしまう。施工業者は普段、建築士の指示通りに施工しているだけなので、デザイン的考察は不可能である。

②「どの下地までやるか」。下地材のどこまでやりかえるかの決断は、工事費に大きく関わる。どこまで傷んでいるかは表面から分かりにくいので、悪質な元請け工務店や、その下請け一種専門業者だと、必要も無い下地工事を見積り計上するかもしれないし、見積り計上したのにも関わらず、隠れてしまう下地のやり替えを施工しない事も有り得る。なので、現場管理者はもとより、その工事をきちんとチェックする清廉潔白な設計監理者が必要である。依頼者側が「安く安く」と言えば、工務店側は仕事を受注する為に、必要がある工事を無くして安い見積りを作成するかもしれない。建築士により、一種専門業者の意見徴収を含めた工事範囲・予算・工法等の深い検討を行い、その検討をきちんと背筋を伸ばして、依頼者側へと提言する。その提言こそが、依頼者の真の利益に通じる。人当たりの良い、感じの良い人ほど、手抜き工事が上手だったりする。安い物には、必ず、理由がある。

③「判断根拠の明確化」。壁に穴を開けてドアやサッシにしたい、この柱を取りたい、床や天井に穴を開けたい等、建物を構成する構造躯体まで手を加えるリノベーション工事の場合、何をどこまでやって良いかを、建築基準法に照らし合わせながら、構造的に問題ないかという専門的な判断は、建築士で無くては出来ない。建築士では無い現場監督や一種専門業者(特に大工さん)の発言や行為は、自身の感や経験に基づいたものなので、それが全て間違いではなかろうが、根拠も責任も無い。リノベーション工事は法整備が不徹底である。住宅・店舗を問わず、そのリノベーションの工事内容の是非に対する判断根拠を明確にしないまま一線を超えてしまう工事が巷に溢れかえっているが、政府や大手企業が隠したいその様な事例はこれからも上手に隠され続けていくだろう。しかし、工事の依頼先を間違えると、あなたの知らぬ間に違法建築物となったり、著しく耐震性の低い家となっていたりする。それは、安心安全だけでな無く、将来の売却時の不動産価値も下げる事となる。重大な事故を発生させた場合、最大の加害者はその建物の持ち主である皆さんで、その際には、知らなかったとか予算が無かった等の言い訳は通用しない事を、明確に理解しておくべきである。


「 5.長期保証の罠 」

新築工事着工件数は全国的に減少の一歩を辿っている。高齢化と人口減少、不景気が主な原因であろう。今まで新築住宅を大量に量産してきたハウスメーカー等の大企業は、リフォーム/リノベーション時代に対して、既に、顧客の取り込みを大々的に、かつ、お客様には気付かれない様に行っている。その戦略の1つが「新築時の長期保証」だ。20年、30年という長期保証を行う大手企業があるが、それは保証という甘い響きの「将来のリフォーム工事顧客取り込み」だとは考えられないだろうか?。以下の点に注意して頂きたい。

①その保証では数年毎の点検が義務付けられているはずだが、その点検で発生した補修工事は全て無料なのか?。「建築工事の不備が証明された事に関しては無料」とあれば、そんな証明はほとんど不可能だと思った方が良い。数年毎の点検はもちろん自社が行う訳なので、特に必要の無い工事を盛込む事も自由自在だ。 補修工事が有料であれば、そもそも、それは「保証」では無い。
②補修工事が無料であっても、他の同程度の他社の家より高い工事費を新築時に支払っているなら、それも保証では無く、先に補修費を支払っているだけである。逆に補修費が無料であれば、点検時に異常が見つかっても、顧客へそれを知らせないかもしれない。自社点検では無く「第三者の点検専門企業に依頼する事」を条件にしておかなければ、これらの不信感は払拭されない。
③点検で発生した工事以外が受け付けて貰えるのか否か?。将来的にはリノベーション工事を行いたいと思うかもしれない。しかし、それを企業側が了承せず、長期保証が終了してしまうのであれば、将来の変化への対応の足枷になってしまうだろう。
④担当者を筆頭に、その企業の対応が、今のままだという確証が無い。新築時の契約前の営業マンの対応が契約後に一変する事を耳にする。新築時から20年とか30年後の話である。新築時の営業マンは当然、退社か転勤しているし、補修担当係はどんな対応なのか分からない。音声メーセージたらい回し状態にならないか?。
⑤保証期間中、その企業が倒産した時、保証はどうなるのか?。
⑥その家を売却したり、親から子へ相続して、家の持ち主の名義が変わっても保証は引き継がれるのだろうか?。引き継がれ無ければ子供世代は困るし、売却の際の付加価値が下がる事になる。
⑦保証期間中の自然災害への対応は?。超巨大地震や、大水害が起こった場合は?。大災害と、普通の自然現象との線引は?。

総じて思う事は、「将来はどうなるか分からないのに、そんな長期の保証を組む事に疑問を覚える」という事だ。将来の方がリフォーム/リノベーション会社も増え、価格も下がり、家族の形態や意向、経済状況も変化する。将来その時に対応の良い、安価な会社を選べば良いのではなかろうか。日本人は根拠の無い安心感が大好きで、その代表格が保険や保証だ。そもそも何故、中古物件が増えているのか?。家はあっても「家族」が減っているのである。家の工事保証はあっても、残念ながら家族が継続される保証は無い。
PS)10年間の瑕疵担保保証は、当社を含めて、全ての住宅新築工事での義務なので、上記の議論からは除外して考える。


「 6.あとがき。。。 」

世間にリフォーム/リノベーション物件が増え、不慣れな工務店、安さだけを売りにした工務店、受注したいだけの工務店等も増え、以前にも増して、お客様の苦情や揉め事が増えている様だ。 リフォーム/リノベーション工事の特徴、問題点、注意点は左記に記した通りなのだが、失敗する事例の一番の共通点は、お客様が「リフォーム/リノベーションを簡単な工事だと思っている」事だと感じる。言葉は悪いが「なめている」のだ。なので、知り合いの一種専門業者とか、ネットで調べて安い見積りを出した工務店とかへ簡単に依頼してしまう。新築だと何度もモデルハウスに通ったり、何社かの話を聞いたりと、もう少し真剣に、労力を使って依頼先の検討を行うが、リフォーム/リノベーションだとその労力を減らしてしまう。

リフォーム/リノベーション工事の揉め事の特徴の1つに「責任の不透明さ」がある。新築なら、問題が発生すれば、全て新しく造っている訳なので文句を言えば良いが、リフォーム/リノベーションはそうでは無い。工事をしていない既存部分や下地部分が残っている。問題の原因が新しく工事した部分か、既存部分なのかは表面からは判別出来ない。判別不可能なら、悪質業者は一目散に逃げるだろう。図面・見積り・打合せ・人間関係・意志決定根拠、全てが気薄で表面的なのも特徴で、それが責任の所在を更に不透明にする。

新築とリフォーム/リノベーションは、工法や材料や技術は違うが、工務店に求める大枠はあまり変わらないのではなかろうか。能力のある建築士や現場監督が最初から最後まであなたの物件に真摯に向き合えるか否か。見積りは安すぎる事無く、適切であるか否か。将来のメンテ対応を含めて、企業の姿勢は美しいか否か。。。。。 詳しくはHPに記載させて頂いておりますのでご覧頂きたい。会社の規模やイメージ戦略に惑わされず、上記の様な大切な事を、お客様自身に見分けて頂か無ければならない。その参考になればと思い本書を発行させて頂いている。お口に合えば幸いです。//



2018.02号

 ~ 建築士 特集 ~

「 1. 建築には用途がある」

「建築士」を紐解く前に、まずは「建築」とは何かを考える必要があると思う。辞書には「人間が快適に安全に活動するための空間を内部に持った構造物を、計画、設計、施工そして使用するに至るまでの行為の過程全体、あるいは一部のこと。また、そのような行為によって作られた構造物そのもの」とある。なるほど。
建築はデザインやアートとは違う。「用途がある」という点が最大の違いだ。人や動物が活動する為の物だ。例えば、ジャングルジムはアートでは無く、建築物(工作物)だ。なぜなら人が使うからだ。鑑賞するだけならアートだが、ジャングルジムはそうでは無い。なので、安全性や快適性が問われる。一級建築士試験では、計画・法規・構造・施工に分類され、防災・都市計画・建築史・環境・設備・材料等が含まれる。それらを包括的にまとめ上げた物が建築であり、それを行う人・職業が「建築士」である。
とは言え、建築にはアート的・デザイン的要素が多分に含まれている。建築は、人が「快適に」使う物で、「快適」の中には、「美しさ」も含まれるからだ。ただし、「美しさ」は「快適」の一部であるだけで、それが「建築」の全てでは、決して無い。

上記の様に「建築」は安全性や快適性が問われるので、法律や規制により律せられ、それを司る「建築士」も又、同様である。 国も国会議員も役人も暇では無いので、誰も好き好んで法律や規制や国家資格などを作ったりはしない。それらが無い世界の方が自由で、面倒も無く、経費も削減出来る。私は心からそう思う。
しかし、自社の利益を最優先するという、資本主義国家では当たり前の姿勢の営利企業を、規制も無しに野放しにすれば、当然、お客様に露見しない様に隠蔽された不正や手抜きが横行する。 それを防ぐ為に、法律や規則や資格が存在する。複雑で難解で一般の方には理解しにくい業種、人の生死に直結する業種、内部がどうなっているのか見えにくい業種に、法律や規制が多い事に気付く。建築は、まさにそんな業種の1つだ。法律や規制や資格が整備されていないと困る人がいるからそれらが存在するのだ。そしてその事を、事件や事故が起こるまで忘れている方が多い。
法律や規制の代弁者が有資格者であり(国家に許可や免許を与えられている訳なので)、その有資格者が、利益最優先の営利企業からお客様を守っているのだ。そしてそれらの法律や資格には罰則規定があり、資格者自体をも厳しくかつ明確に律しられている。


「 2.建築士の種類・業務 」

「建築士」という表現は正確では無い。資格試験にて免許を受けた者で、一級・二級・木造に分類され、行える建築の業務範囲が異なるからだ。一級建築士の中には更に高度な技能を有する、構造一級建築士、設備一級建築士があり、一定以上の建築物にはそれらの建築士が関わらなければならない定めとなっている。

多くの方々が、建築士は図面を描いたら終わりと思っているが、そうでは無い。建築士には「工事監理」という重要な業務があり、その工事監理も建築士の資格が必要である。建築の工事には、様々な点で「工事監理者の承認を得て」という法律で決められた内容があり、施工業者は勝手に工事を進める事が出来ない様になっている。工事監理者が承認を行わず、工事がストップすると施工業者は困った事になる。又、工事内容に問題がある事を工事監理者が発見した場合、その事を発注者に報告する義務があり、その場合、発注者は施工業者への料金の支払いを中止したり、その部分の作り直しを命じたり出来るので、この場合も施工業者は困った事となる。施工業者が建築士の事を「先生」と呼び、祭り上げるのは上記の様な事情がある為で、「建築士」が特別に偉い訳では決して無い。ただし、お客様の意図を盛り込んであるという観点から、建築士により作成された建築図面は尊重すべき物で、施工業者が自分に都合良く勝手に判断する事はあってはならないし、発注者の大切な資産であるその建築の性能を確保する為の、厳格で甘えの無い工事監理は大切な業務であろうと考える。

建築士の国家試験を受験する為には、定められた実務経験年数が必要で、勤務した設計事務所等の証明書も必要である。この点はなかなか興味深い。ペーパー試験だけの合否では無く、きちんと実務を踏まないと建築士にはなれないよ!という事である。工事監理も建築士が行う事から、様々な工事現場での知識も試験には出題されるので、事務所内での経験のみならず、ヘルメットをかぶって現場に出掛ける方が実際の経験値も向上する。 又、合格後には、数年に一回、講習会への参加が義務付けられ、継続的な技術や意識の向上が促進される様に図られている。

建築士の国家資格を持っているだけでは仕事を受けられない。 建築士事務所の許可・登録を受けなくてはならない。建築士事務所の開設者となる為には、建築士として定められた実務経験が必要な上、管理建築士の講習会参加が義務付けられており、建築の品質確保の為、様々な法規制が細かく厳密に敷かれている。

この様に、建築士、建築士事務所は、自らが厳しい法規制を受け、資格を得る事、又それの継続もなかなか難しい。なので、建築士や建築士事務所は、その職業に対して、大いなる決意・熱意を持ち、地道で誠実な努力をした事、又それを継続していると想像し得る。会社が立派でも、所属する個人が立派だとは限らない。控えめな小さな字で名刺に書かれてたその資格や許可から、その個人や企業の想い・姿勢・スキル等、様々な事が読み取れる。


「 3.建築士 と デザインナー 」

「建物のデザインはデザイナーさんがやり、その建物の確認申請を建築士さんがやる」と、思っている方がたまにいらっしゃる。

デザイナーという言葉は不明瞭な言葉である。デザイナーという国家資格は存在しない。建築系の民間資格では、「インテリアデザイナー」というものがあるので、これが一番近いだろうか。ただ、このインテリアデザイナーという民間資格が無くとも建物のデザインは行える。自分はデザインが出来るという自信満々の素人でもデザインは可能である。デザイン事務所を設立する為の法律も許可もほとんど無い。法律・許可が無いという事は罰則も無い。建築のデザイナーというと、構造躯体の内側全ての内装の設計を行う場合(主に店舗系)と、内装の色決めだけを行う場合(主に住宅系)を指す事が多いが、定義付けの難しい業界である。

一方、建築士でも、確認申請業務のみを行っている建築士の方々も多くいらっしゃる。誰かが決めたプランを建築基準法に照らし合わせ確認申請図書を作成し、許可を下ろす。そして、法律で決められた最低限の工事監理を行う。この様な建築士とデザイナーが組み合わさって1つの建物を創るシステムを採用している企業が世の中に数多く存在する。特に店舗系ではこのシステムが多い。住宅系では小規模の工務店に多い。加えて、住宅系では、デザイナーは存在せず、内装の色決めはお客様にお任せ、という場合もある。プランは素人のお客様の言う通りか、工務店の無資格の社長とか営業マンが行い、建築士は外注で雇って確認申請だけ行う。しかし、このシステム、皆さんは違和感を感じませんか?

例えば、格子がある。格子の見え方は、色だけで決まるものでは無い。1本1本の格子のサイズ、格子のピッチ、格子の高さ、格子の周りの状況etcにて、その格子の見え方は変わってくる。格子の素材や用途による強度の考察、法規のチェック、陽の当たりや風の通り具合も重要だ。色を決めるだけでは無く、総合的に考察しなくては美しく機能的な格子は出来ないと思われる。
この格子の例が建築にも当てはまる。デザイン的に、プランや躯体をこうしたい!と思っても、内装デザインだけの業務範囲であればどうしようも無い。プランや確認申請を先行し、内装の色決めが後付けだったり、建築士がデザインを無視し確認申請だけ行ったりすれば、デザインや法律だけでは無く複合的な価値が必要な建築という分野では、真の意味で豊かなものとはなり得ないのではなかろうか。
実際、私は、天井高が10cm違うだけで室内の印象が大きく変わる事も知っているし、家の機能向上の為に必要であれば、構造を変えてでも窓を付けたりするし、デザイン性UPの為に役所に掛け合って法律をギリギリ認めて貰ったりする。

建築士がお客様の意図を伺い、法規、機能、構造、デザイン、メンテナンス性、予算等を総合的にまとめ上げた物の方がよりベストに近づくと考える。この様な総合的な建築に関する能力を持ち合わせた人が、真の意味での「建築士」であろうと、私は思う。


「 4.建築士-誕生の歴史 」

明治以前、日本の建築物の殆ど全ては木造建築物だった。今でも多くの住宅は木造である。何故だろう。風土・文化・歴史面が強く関係している。山や林の多い日本には、昔から木材が豊富に存在し、その木材は弾力に富み、軽く、柔らかく、地震国の建築材料に最適だった。日本特有の高温多湿な気候との因果関係も大きい。開口部を広く取れる木造建築は通気性に優れ、又、軒を広く長く確保して多い雨に対応し、高温多湿な気候と調和する建築様式を形成した。日本の風土に木造が合っていた。木や紙や萱や土で構成された日本建築は耐久年数が短く、欧米の様に建物そのものを残すというより、考え方、心、型、様式を伝えていくという建築様式が出来上がった(伊勢神宮の式年遷宮が顕著な例)。

しかし、1868年、明治維新。建築に限らず、全てにおいての大転換を日本は迎える。開国は人々に情報を与えた。世界には自分達が知らなかった文化や価値観がある事を。建築で言えば、鉄・コンクリート・ガラス等の新素材、木造だけではない構造方法、建物の高層化・大規模化、電気・ガス・上水・下水を始めとする生活環境の高度化、それに伴う建物への高度な要求、コストや工期の厳格化、新しいデザイン、価値観の相違、個人主義。。。。
建築物の大規模化や複雑化が進むにつれて建築統括者の役割が必要となり、欧米を参考にした、アーキテクト:建築士、と呼ばれる職業が生まれた。日本は近代化の道を進み、欲は膨らみ、世界へ目を向け、エネルギー資源を欲し、戦争へ進み、1945年-昭和20年の終戦を経て、昭和25年、建築士という資格制度を制定する建築士法が成立し、現在の建築士制度が法的に整備された。

そして、この100年足らずで日本人の考え方・生活様式は激しい変化をした。価値観の多様化、IT化、人間の寿命自体も延びた。 地球環境も変化した。地震のリスクは相変わらずで、CO2の排出量は増え、気温が上がり、台風が増え、突発豪雨も頻発。化石資源の枯渇は当然で、クラッシュ&ビルドの建築様式も限界だ。
そこで歴史を振り返れば、降雪も含む高温多湿な日本風土と折り合いを付けながら健やかに暮らす為の、先人達の英知の結晶である日本建築様式がある。近代化された建設材料・機器を取込み、古来からの日本建築様式と上手に融合する事が、真の豊かさに繋がる事に気付いて頂きたい。歴史を紐解いてみると、そんな建築や住宅を創り上げる事こそが建築士の誕生理由であった事、そしてその職能が、今まさに求められている事に気付くのである。

住宅等の小規模建築であれば、建築士の代役を、大工や現場監督や営業担当が行えると思われている方がいるが、それは疑問だ。
確かに木造のみだった明治以前、建築の統括係は大工だった。 だが、上記にある様な近代化の流れの中、建築は多様化し、要求が高まり、必要とされたから建築士が産まれ、現在に至る。
大工は木材の加工や取付の専門職、現場監督は予算管理と潤滑に現場を取仕切る専門職、営業担当はお客様のお相手と建物を売る専門職で、それらが建築士の職能と違う事は明白であろう。


「 5.修行:大学建築学科 」

建築士となる人の多くは、四年制大学の建築学科、もしくは設計の専門学校に進学する。もちろん、進学せずに、高校卒業後すぐに就職し、長い実務経験の末、建築士になる事も可能であるが、特殊なケースであろう。最終学歴により建築士試験の際の実務経験必要年数が変わって来るのも、この試験の特色である。

これは建築学科に限らないと思うが、2年間の専門学校と4年間の大学とでは当然、中身が違う。2年間の専門学校では、4年の半分しか時間が無い為、仕事に直接つながる住宅系の実務の授業が多い。4年間の大学では、建築の実務の授業は後半で、前半は一般教養、建築の思想・歴史、文化などを学ぶ。ピンポイントで学ぶ専門学校に比べ、建築業界全体を広く深く学ぶイメージ。大学も工学系と芸術系とでは、先生の傾向、校風、カリキュラムや内容に大きな違いがある様だ。私の出身大学では、3年生から、デザイン、構造、施工、設備とコースを絞り込む。そのコースに沿って授業を選択していく。又、時期を同じくして、選択したコースに属した研究室を選択してその研究室に所属する事になる。
私の経験では、この「研究室」がミソであった。研究室は1人の先生がトップで、以下、大学院2年、1年、大学4年、3年で構成される。建築の先生の多くは大学の研究室とは別に、建築事務所を経営されている事が多く、その事務所のスタッフの方々とも交流が発生する。大学3年生から見て先生はもう神の様な存在でなかなかお話出来ないが、大学院生や事務所の方々に本当に貴重な話や体験を頂いたり、図面を見て頂き、強烈なダメ出しを頂く。又、研究室には建築事務所のバイトの話が転がっていて、私も3、4年生の時期に、数多く建築事務所でバイトをさせて頂き、多くの経験を積み、その後の就職活動にも活かされた。この研究室にて建築の奥深さ、本当の楽しさに気付き、はまってしまい、その後の進路に多くの影響を受ける学生が多く、私もその1人だ。

建築学科の生徒が全て建築事務所に就職する訳では無い。設計業だけでも、個人アトリエ系建築事務所、組織系建築事務所、ゼネコンや工務店の設計部、ハウスメーカーの設計部、照明機器や衛生機器等のメーカーの設計部など多岐にわたる。他学科の就職活動と同様に、出身大学、大学の成績などにより選別を受け、面接に至る。建築学科の学生の多くは、大学時代に作成した図面や作品を持参して面接に挑む。この点は他学科には無い珍しい特徴だ。1畳程もある模型を持参するツワモノもいた(車にて数人で搬入)。建築事務所という組織は、協調性や従順性等よりも、強烈な個性や熱量の様なものを重視している事の現れだろう。
強烈な熱量の持ち主は、見方を変えると「変人」で、そんな人が建築学科にはゴロゴロいた。お金が無くインスタント食品ばかりで、昼夜逆転どころかほとんど寝ず、風呂も入らず無精髭で製図台に向かい、信じられない様な美しい図面を描いていた。社会に出た後もその強烈な熱量を減らす事の無い「超変人」が、超一流建築士となるのだが、その卵達と製図台を並べ、一心不乱に切磋琢磨した多感な時期の濃密な体験は、掛替えのない物である。


「 6.修行:建築士事務所 」

新入社員が私も含めてあまり使い物にならないのは当然で、先輩や上司の指導を受けながら、徐々に成長していく。現在は不明だが、少なくとも15年前は、建築事務所では残業という自覚も無く、ベテラン建築士を含めて、深夜まで働いていた。残業代とか、有給など考えた事も無く、それが普通だった。物件の全体像はベテラン建築士が考え、新人はその一部を任される。未熟な頃は、俯瞰にて物件全体を見られない為、自分が行っている作業がその物件にどんな影響を与えているかは分からず、遮二無二行う内に徐々に見えて来て、同時に喜びも、奥深さも、怖さも覚える。
そして、定められた実務経験年数を過ぎた頃、ただでさえ激務な中、プライバシーや睡眠の時間を更に削りながら長くて過酷な建築士受験勉強を自らに強い、合格や不合格を繰り返す。もちろん全ての人が合格する訳では無く、ついには諦めてしまう方も数多くいる。合格する方は30才前後に多く、それを過ぎると会社の中でのポストが上がったり、家庭を持ったりし、なかなか勉強時間が確保出来なくなり、合格が困難になる。入社10年程で30才を過ぎ、資格も取得し、業務も一通りこなせる様になると、世間や会社や建築の見え方が、少しずつ深く、広くなっていく。

ある程度力が付いて来ると、独立開業するか、会社に残るか、他社に移るか、悩む。加えて、この時期になると、建築士は、1人でこもって図面を描いているだけでは無く、お客様を筆頭に、多くの人とのコミュニケーション能力が必要である事に気付く。時勢や流行り廃り、世間にも目を向けておく必要もある。建築現場に行けば、一見こわもての親方と議論を戦わせる事もあるし、お付き合いでの会食等も多い。建築士の目的は、美しい図面を描く事でも、美しい建物を創る事でも無く、利用者が幸せになれる建物を創る事なので、他者の気持ちの分かる様、広く深い様々な経験が必須で、その様な体験・苦労を行ったか否かで、その後の建築士としての裾野の広がり方が変わってくると感じている。//



2017.12号

 ~ 建築の値段 特集 ~

「 1.結論はいつも同じ 」

前回に続き、重いテーマですが、大変重要なテーマ。逃げずに、正面からぶつかってみたいと思います。頑張ります♪。

「建築の金額は分かりにくい」というご意見をよく耳にする。 当社の工事費の事は、当社HP「cost」ページに出来る限り分かり易く明記させて頂いているのでご覧頂きたい。本「taoyaka通信」を読んだだけで建築業界の工事費の事を全て理解して頂く事は出来ないだろう。あくまで概略の説明程度である。しかしながら、本書を読んで頂ければ、建築業界だけが特殊なのではなく、多くの他業種と同じ理屈である事が御理解頂けるだろう。

そもそも建築は値段の事だけでは無く、潜在的に不満やクレームが出やすい物である。建売住宅や集合住宅を除いて、建築物のほとんどは「少し使ってみてから決める事」が出来ない。なので、契約してから、住み始めてから、不満が出る。建築は使用年数が他の物と比べると異常に長い。長い年月の間に、時代も世間も自分も家族も多いに変化していく。初めは満足していた事も、あたかも最初からの不満の様に感じて来る事もある。なので住宅は、詳細仕様検討、将来の家族の変化への対応、住む家族や家への優しさからの配慮など、多岐に渡る複雑な要素を上手に構築し、まとめ上げた物が「値段」という1つの指標になって目の前に提示されるべきだが、そんな同業他社様はほとんど見当たらない。

今回は「建築の値段」が話題だが、値段はあくまで1つの要素である。全ては繋がっている。複雑な話より、お金の話題は分かり易い。安いとか高いとか言えば良いだけだから。ただし、安ければ良いのでは無い、という事を忘れがちである。良いものがお値打ち価格な事が好ましい。必ず、普通より安い物にはそれなりの理由がある。安い訳では無く、安く見せられているだけである。

下記を読んで頂く前に結論を申し上げる。毎回申し上げるのだが今回も同様だ。お客様が建築の全てを理解する事は大変困難であるし、その必要は無い。なので世の中にはその道のプロがいる。お客様のやるべき事は「信頼できるプロ」を選ぶ事である。何を根拠に「信頼出来る」と判断するか。まずはその事を真剣に考える必要がある。その為に、本書をご活用頂ければ幸いである。


「 2.理解不能 → イメージ判断 」

そもそも、私達はどの様な業種であれ「見積書」なる物を目にする事は稀である。買い物のほとんどがその物の「総額」の値段を見て判断している。リンゴ1個は100円、という具合に。リンゴ1個の値段の内訳の見積書などは目にしない。又、ほとんどの物は、一度、購入して(試して)みてから高い安いの判断を行い、満足出来なければ、次回からは違うお店に行ったり、違う物を購入したりするであろう。住宅はそうはいかない。大変高額だから。又、注文住宅は、建売住宅や集合住宅・高級車の購入と違い、完成品が目の前に無い。目にする事も試す事も出来ない。この様に、大変高額で、目の前に完成品が無い物の「見積書」を目にする機会を頑張って考えてみると、長期の保険、大病の病院費、子供の学費、くらいであろうか。うわっ、何だか頭の痛い項目ばかりですね。この様に、私達は見積書なる物を見る・検討する事に慣れていない。住宅の見積書なんて良く分からなくて、当然だ。

加えて、上記の物に比べて、自由設計の注文住宅は、選択肢が広い。一般の方々には建築の知識は無く、何の選択から始めて良いか、どう選択して良いのか分からない。値段は安いほうが良いが、耐久性は?見た目は?使い勝手は?メンテナンスは?。全て、あなたの自由である。ネットで調べてみるが、良い事も悪い事も書いてある。自由であると言われると困る。これまで進むべき方向は、国や先生や親や会社や世間が決めてくれてたから。

なので、ふらりとモデルルームに行って、こんな感じが好きだな~、この会社のCM知ってる~、営業のお兄さん男前~、みたいな感じでイメージ先行で進んで行く。数社から分厚い見積書を受け取ったは良いが、内容はチンプンカンプンだ。知らない言葉はネットで調べれば雰囲気は分かるが、それが自分にとって良い事なのかどうかは判断出来ない。なので、分厚い見積書の最初のページ、つまり総額だけの判断になる。営業マンに契約を急かされると、自分では判断出来なくなり、パートナーに最終決定を押付けたりする。両親や親戚に相談したら、父親の同級生の工務店の社長さんがベンツに乗って登場したり、「30年前に自分の家を建てて貰った大工さんの息子さんだから安心」という何が安心なのか良く分からない理屈で、知り合いの大工さんを紹介してくる叔父も登場。紹介して頂いたので無下に断る事は難しく、場は多いに混乱する。色々な人から色々な話を聞き、もう頭はぐちゃぐちゃで、夫婦は言い争う様になり、疲れ果てる。周りに迷惑を掛け、自分達は疲れ果て、最終的に、「大手で安心だから!」と相変わらずイメージ判断のみで1社目の大手住宅会社で決定。

そうなるのは致し方無い。だって住宅を注文するのは初めてで建築の事なんて分からないし、見積書だって普段見ないし、見ても分からない。だからイメージで判断せざるを得ない!という心境を、多くの同業他社様は重々承知している。そして、イメージ戦略を行い、そのイメージ戦略に多くのお客様は、企業の予定通り、はまっている。という事を理解する事が、最初の一歩である。


「 3.下請け専門業者のお陰 」

住宅は、元請け会社だけでは創れない。多くの下請け会社(専門職人)が必要である。超大手のスーパーゼネコンでも、小さい工務店でもそれは同じである。小さい住宅会社の場合、その会社の社員で行っている事は、営業、現場管理、くらいである。設計は協力会社の設計者の事が多い。時には現場管理も自社でやらない場合もある。建築業界は浮き沈みが激しい業界であり、1つの仕事の値段が高い業界である。なので、元請け会社は、出来る限り社員を増やすリスクを避ける傾向にある。その傾向は下請け会社でも同様で、下請けの下請け(孫請け)業者の存在する現場も数多くある。自社で行わない要素が多いという事は、多くの下請け会社から提出される見積りにより、その住宅会社の見積りも成り立っている。下請け会社が元請け会社を支えているのである。

注文住宅で完全自由設計の場合、毎物件、形や仕様が違う。敷地環境も、現場への交通の便も、季節も違う。なので、毎物件、下請け会社からの見積り内容も変わって当たり前であり、元請け会社からお客様へ提出される見積りも違って当たり前である。お客様に対して真摯な見積りを作ろうとすれば、まずは設計やデザインに時間を掛け、それを元にした下請け会社との内容や値段の協議に時間を掛けるのは当然である。「当社は設計も見積りも早いです(^o^)」=「当社は色々な事が適当です(T_T)」という事である。


「 4.問屋・商社・販売店 」

建築に限らず、消費者が、生産者・製造メーカーと直接取り引きをして商品を手に入れる事は甚だ困難だ。例えばボールペンはメーカーから直接買わずに文具店で買う。メーカー→問屋・商社→販売店→消費者という流れだ。問屋や商社はメーカーに代わって商品の提案・説明・配達・販売を販売店に行う。例えば、問屋・商社はメーカーから60円で購入し、20円儲けで80円で販売店に売り、販売店は20円儲けて消費者に100円で売る、という具合だ。私達は通常、このシステムでほとんどの物を購入している。

近年、消費者が販売店を通さず、ネットで安く購入し、取付だけを工務店に依頼するというケースがある。普通の買い物であればこの行為には何の問題も無い。しかし建築では「取付作業」が発生するので注意が必要だ。誰が、いつ取付けるのか、取付料金はいくらか、物はいつ現場に入れ、その運搬は誰が行い、現場の埃や傷や盗難からどう守り、物のサイズと現場のサイズとの調整は誰が行い、取付ける為の下地はどの様に誰が行うか等といった問題が発生する。又、ネットでの売買は、消費者からのクレームや、商品の不備、将来のメンテに対してのフォローが極端に少ない。建築は使用年数が長く為、将来へのリスクが他の買い物よりも高い。様々な手間や取付料、リスク等を考えると、物の購入も含めて、普通に業者に頼んだ方が総額は安く、良い結果となる事が多い。「安物買いの銭失い」。昔の人はちゃんと分かっている。


「 5.値段=◯+△+☆ 」

建築を含めて、ほとんど全ての物の値段は、材料費+人件費+諸経費、にて決定される。それぞれを読み解いてみたい。

まずは「材料費」。建築において、材料費は多くの建材がそれに当たる。電化製品、衛生器具、サッシなど、原料を加工され組み立てられた製品を購入する場合も材料費に含まれる。レストランでは食材費に当たる。加工された冷凍食品も食材費に含まれる。
次に「人件費」。元請け会社の社員の人件費に加えて、下請の各種専門業者さんの人件費も含まれる。レストランでは、調理師やホールでの給仕係の人件費がこれに当たる。
最後に「諸経費」。会社の社屋費、光熱費、紙代、印刷代、宣伝広告費、税金、交通費、制服代、福利厚生費、接待交際費等。

あなたは一度はこう考えた事があるはずだ。「少しでも安く住宅を創りたい」と。そういうご要望が巷に溢れかえっている事は、住宅に関わる全ての者は重々承知している。では工事費総額を安くする為に、建設会社は何を削れば良いのであろうか? 

まずは「材料費」。材料を安くする一番の早道は、材料の質を落とせば良い。お客様にばれなければ、生産国・メーカーは二の次で安い物を使えば良い。次に考えられるのは、大量に同じ製品を発注し、問屋に値引き交渉を行う。自由設計の注文住宅を謳いながら実は毎回同じ商品へお客様を誘導。設計も使い回し。レストランが冷凍食品、加工済み食品を多く使う様なものですね。結果、何の味気もない、何だか似たような家が日本中に溢れかえる。
次に「人件費」。簡単である。1つの物件に携わる人間を減らせば良い。1人の現場監督が大量の物件を管理する。現場なんかはほとんど行けないし、物件への愛着は皆無である。次に、安いという理由だけで下請専門業者を選定する。安い専門業者は、当然そこで働く職人のレベルも落ちる。下請価格が安いので、当然、短時間で現場を終わらせる必要があり、必然的にやっつけ仕事となる。見えない部分、隠れる部分での手抜き工事も横行。それをチェックする現場監督が現場に来ない事は前記した通り。

理解して頂けたであろうか。建築だけでは無く、工夫も無く安価を求めるとこうなってしまう。誰だって自分の取り分を減らしたくは無い。上記の様な方法は、決して、お客様の為にならないのは明白だが、残念ながら、そんな同業他社様ばかりである。

おっと、忘れていました。「諸経費」。立派な本社ビル費や、公表坪単価よりも随分お金を掛けたショールーム費、イメージの良い俳優達を使ったTV-CMや、イメージのみを刷り込もうとする立派なパンフレット等の宣伝広告費、幹部だけ大盤振る舞いの接待交際費等は、どんどん削っても皆さんの家のクオリティーを下げずに、工事費を安価に出来ます。しかし残念ながら、多くの同業他社様は「諸経費」は削らず、上記の様に「材料費」や「役員以外の人件費」を削って、総額を安価にしようと努力しています。


「 6.3大項目 」

多くの住宅会社の見積書は「本体工事費」「付帯工事費」「諸経費」の3つの大項目に分けられている。 各項目の詳しい内訳は、当社HP「cost」ページをご覧下さい。 何故、この3種類に分けられているのだろうか?

前提となっているのが、設計と施工が一体の住宅会社に多くの方が自分の家を依頼する事が影響している。設計を設計事務所に頼み、施工を別会社の工務店に依頼する場合、設計事務所が全ての内容を設計図に記し、それを元に、仕様も面積も全て同じ条件で、数社の工務店が見積りを行う。なのでお客様は、総額で検討出来る。「見積りを比べる行為」としては、基本的にこれが正しい姿勢であろう。しかし、一般的には設計事務所に設計は頼まない。設計と施工が一体の会社に見積りを依頼する。そうなると設計も、仕様も、床面積も各社ばらばらだ。良かれと想い、良い仕様にしたり、生活が豊かになるであろう機器を含めたりすると総工費は高くなり、他社との金額競争に負ける事となる。なので、仕様のグレードアップ、最新型の機器、諸々の経費等は「付帯工事費」や「諸経費」に入れて、それらを削ぎ落とした「本体工事費」を算出し、それを床面積で割った、「本体工事費坪単価」にてお客様は住宅会社の見積りを比較する。これが、多くの住宅会社が上記3つの大項目に分類している理由である。しかし、各社毎に、本体工事費の材料も違えば、家の形も違うので、前記した「本体工事費坪単価」にて金額を公平に比べるという行為はほとんど不可能である。あくまで目安程度にしかならない。

上記にある様に、「付帯工事」「諸経費」にどの様な仕様の、何が入っているかは各社バラバラ。契約を取れさえば良いという同業他社様は見積り計上されていない項目(別途工事)が多く、気の利いた良い住宅会社程、お客様が困らない様に全てがきちんと入っていて、その為に他社よりも「付帯工事」「諸経費」が高額になっている事もあるだろうから、何が含まれているか否かを、細部に渡ってチェックする必要がある。

特に別途工事は要注意である。当社の様に、別途工事無しで、全て一連のデザイン・施工の元にさせて頂く会社は非常に稀で、見積りを安く見せたい、手間が掛かる別途工事はなるべくやりたくないという同業他社様がほとんどである。別途工事内容は各社バラバラの上、多くの同業他社様は別途工事の内容には無頓着。だって、別途=料金に含まれない、のだから。当然、別途工事業者の手配や打合せはお客様自身が行う必要があり、「本体工事がこうなので、この仕様の別途工事は出来ません」という事が多いにあるし、手間も掛かる。本来「別途工事」は「後から考えれば良い工事」では無いのだ。又、本体工事とデザインがバラバラな、残念な出来栄えの別途工事を多く見掛ける。カーポート、庭等の外構、表札やポスト、カーテンやブラインド、ペンダント照明、エアコンetc。合計価格が安い住宅会社を選んだが、別途工事が多く、結局、高く付いた!という話を非常によく耳にする。


「 7.あとがき。。。 」

限られた書面の中、全てを伝えきれない事、お許し下さい。それでも私なりに優先順位を付けて、分かり易く記したつもりです。 「お金」は大変大切な物です。ただ、私は「お金」よりも大切な物があると考えております。「お金」よりも大切な物を優先しながら、家創りを行いたいのだが、それを実現する為に「お金」が必要。なので、イメージ先行では無く、熱い想いを前提とした、公平で清潔で理論的な専門知識を元に、「お金よりも大切な物」と「お金」の両方をご納得の上、家創りを行って頂きたい。将来、「あなたは何にこだわって家を創ったの?」という友人の質問に、明快に答えて頂きたい。そして「〇〇にこだわったから、その部分では工事費がUPしたけど、それ以外で予算を削ったので、総額は変わらず♪。」と照れ笑いして頂きたい。こだわりは愛に繋がります。愛のある家創りの為の「お金」のお話です♪。



2017.08号

 ~ 構造・耐震 特集 ~

「 1.思考の誘導と戦略 」

本当はこんな特集をやりたくは無い。なぜなら、「構造・耐震」への配慮は、本来、建築物が持つべき最低限の能力であるから、特に声高に言う必要は無いと考えているからだ。この様な最低限の事を論じるより、もっと皆さんに伝えたい事が沢山ある。しかし、「構造・耐震」への皆様の関心は高まる一方、世間の「構造・耐震」に関する誤解や思い込みが目に余る様になってきた。

毎日の様にテレビに流れる自然災害被災地の映像。政府・マスコミ・大手建築業界による、慢性的な不安感や恐怖の刷り込み、その上での思考の誘導。根拠の無い、漠然とした安心・安全のキャッチコピー。ITによる根拠の無い情報の過多や、当然、自社のアピールポイントしか書かない企業のHP。先にも書いたが、「構造・耐震」への配慮は、最低限の事なのだが、なんだかこの事をことさら持上げていない会社の家には価値がない!という極端な思考に陥っているお客様もいらっしゃいます。悲しいかな、大手建築企業の思い通りの方々です。

と、まあ、この様な状況ですので、この様な特集にて、皆様に 「構造・耐震」の本当の事をお伝えしておこうと思う次第です。 「本当の事」と大層に書きましたが、基本的な事を書くだけであります。何故なら、そんな基本的な事でさえ、皆さんには知らされていないからです。何故知らされていないかといえば、それを知られる事は誰かにとって都合が悪いからです。無知のままにしておき、漠然とした不安を与え、都合の良い方向へ誘導するという、誰かの戦略があるからです。
「基本的に、民衆は無知のままで、政治にも興味が無い方が都合が良い」と、以前、とある政治家が言ったそうです。

当社は、上記の様な、「構造・耐震」の基本事項を、皆さんに知られても全く困らない。むしろ嬉しい限り。何故なら、当社は、当たり前の事として、特に大げさに自慢する事無く、「構造・耐震」に充分に配慮し、充分な安全率を加味し、十二分に強固な建物を設計&施工させて頂いているからだ。本当の「構造・耐震」をご理解頂き、不安を解消するだけの家創りでは無く、楽しさや自由を実現する家創りを行って頂く事を、切に願っている。


「 2.そもそも。。。 」

「自由設計で地震に強い家」を創る為にはどうしたら良いのだろうか? まず最初に答えを言ってしまおう。

答)あなたが信用出来る、誠実で有能な設計士のいる会社(設計事務所でも工務店でも)に出会い、その設計士の意見を良く聞き、信頼関係を築き、家創り計画を楽しく進める。である。 これが唯一の方法であると断言する。理由は以下の記す。

建物の構造に関して本当の意味で精通しているのは、建築士(設計士)だけである。大工さんや現場監督さんが「構造に詳しい」というイメージを持っている場合があるが、その方が設計のきちんとした修行をしていない場合は、それは間違いである。大工さんは、木材を主として、それらの加工や組み立てに秀でている。現場監督さんは、工事の幅広い知識を有し、設計図を元にして、予算や工期を適切に選定して工事を進めるのに秀でている。 それぞれ何かに秀でているが、決して構造の専門家では無い。

お客様のご要望を元に、予算や法規をクリアーしながら、家としての豊かな機能を盛り込み、構造的にバランスの取れた家を考える行為は、きちんとした修行を行った設計士しか出来ない。素人のお客様や、素人の営業マンが持って来た平面計画をそのまま図面にし、後付けで壁量計算(木造の構造検討の一種)や金物計画をする様な進め方では、本当の意味での地震に強い家は絶対に産まれない。壁量計算ではOKが出ても、優秀そうな構造金物を使っても、地震力が特定の箇所に集中すればその家は崩壊する。一部の材料・金物が強いだけで、家そのものが強いわけでは無い。
構造はもちろんの事、建築はバランス・調和である。
それは建築のデザインや機能にも言える事であるし、建築以外の全ての物・行為にも当てはまる事の様な気がする。

どんな職業でも同じであるが、建築を行う事も大変に難しい行為である。建築は他の物より巨大で、コストも高く、危険を伴う。預かっているのは人命である。そんな建築業界だからこそ、一人で全てが出来る訳では無い。多くの専門分野が集まって、1つの建築物を創っていく。1つの専門分野の修行であれ、長い年月を要する。建築分野の中の1つである「設計」という分野も同様に長い修業を要する。資格はもちろん大切で有用であるが、資格があれば全てOK、という事では無い。良き人・出会いに恵まれ、多くの先輩やお客様に育てられ、ゆっくり、着実に育って行かねば、優秀で誠実な設計者にはなれない。どんな職種であれ、そんなに簡単に「プロフェッショナル」になれる訳が無い。

上記の様な事は冷静になれば誰でも気付く事だと思われるが、自分の専門分野以外になると、皆、イメージや印象操作に弱く、容易に誘導されてしまう。個人の未熟さを隠す為の、大企業の大きな傘は有効である。一部の商品をクローズアップするCM・公告はその傘の一種である事に、気付いて頂ければ幸いである。


「3.日本国における基準」

日本国におけるそもそもの構造・耐震の基準をお知りだろうか? (ここでは、木造2階建ての住宅、という縛りでの話とする。)
日本国における建築の法律の中心は「建築基準法」であろう。どれほど強固な家を作っても、この建築基準法に則っていなければ建築の許可は降りない。
又、皆さんが木造2階建ての住宅を新築する場合の、役所による申請や検査は、建築基準法による確認申請と完了検査である。瑕疵担保法による申請や検査もあるが、これは保険や保証にまつわる事なのでここでは除く事とする。皆さんの住宅の構造や耐震に関する縛りは、この確認申請&検査のみである。

では、木造2階建て住宅において、建築基準法で定められている構造基準とはどの様な内容であろうか? 大きく分けて2種類。
1、きちんと構造設計士に構造計算して貰う。
2、簡易な構造検討を行う。
上記1、これは本当に素晴らしい事。設計士にも色々種類や得意分野があり、設計士なら誰でも構造が出来る訳では無い。きちんと構造を学んで、学問として計算が出来るのは構造設計士だけである。しかし当然の事ながら、構造設計料が追加で必要。なので、木造2階建て住宅で、構造設計士に構造計算&設計を依頼するケースは一般的にほとんど無い。なので、上記2の簡易な構造検討が一般的な方法となっている。簡易な構造検討で一番メジャーな方法が、壁量計算N値計算であろう。この計算&図面であれば、構造設計士で無く、普通の意匠設計士でも充分出来る。

しかし、驚くなかれ! 上記の簡易検討方法である壁量計算&N値計算は、唯一の申請&検査である確認申請の必要書類に含まれていないのである!(設計士が適正に行う事という条文のみ)。この事を皆さんは知っていましたか? 世間では「構造・耐震」と騒いでいるのに、役所(国・法律)はノーチェック!なのだ。 もちろん、優秀で誠実な設計士は、確認申請では不必要なこの壁量計算&N値計算を、経費や手間を掛けてでもきちんと行っている。しかし、非常に多くの、不誠実で利益しか興味の無い工務店は、「確認申請で不必要なのだからやる必要は無い」という湾曲した考え方の元、それら壁量計算&N値計算を行っていない。なぜ国は構造&耐震のチェックを行わないのか?という問いの答えはどこにも載っていないし、その問い自体を誰も発しない。

日本中の確認申請物件の中で一番多くを占めるのが、木造2階建て住宅。構造&耐震の計算&図面は、作成する事も、提出された申請書をチェックするのも手間が掛かる。手間が増えて一番困るのは、役所(国)と、政治家さんと懇意にしている大手住宅会社さん(確認申請を大量に製作している)という図式になる。。。
膨大な手間が掛かる訳では無い壁量計算&N値計算程度、提出を求めて確認&チェックすれば良い。でもやらない。この事がニュースにもならない。この事実が何を意味するか、皆さんよく考えて頂きたい。損をするのは(被害を被るのは)皆さんである。


「 4.震度6強~7まで 」

では、先程述べた構造設計士の構造計算や、簡易構造検討をきちんと行った場合、あなたの木造2階建て住宅はどの程度の震度まで耐えられるのだろうか。答えは「震度6強~7」。これが最大値である。(加えて、耐震等級というものがあるが、話が複雑になるので、ここでは触れない事とする。)
東日本大震災や熊本地震は震度7であった。上記の耐震等級を除いて、それ以上の強度の計算方法は日本の法律には存在しない。何故、存在しないのだろうか?

「自然災害に対して完璧に予防したいのであれば、まずは日本に住んではいけない!」と、ある識者が述べておられた。 少しはっきり言い過ぎではあるが、的を得ている。 南北に細長く、大雪も降るし、太平洋で大量発生する台風の通学路に当たる。活断層の巣と言われ、活火山は無数に存在する。周りは海だらけで津波はどこからでも押し寄せる。海に挟まれた国土は細長く、中央部は山脈が連なり、土砂災害も頻発する。 狭い平野に押し寄せた人々は細かく土地を割り、ぎゅうぎゅう詰めの都会を形成。隣地との距離は人も通れぬ程となり、一度火災が起これば、風の強い風土と相まって延焼し大火となる。 様々な災害の中で、地震による揺れの被害が一番確率が高いのだろうか? 詳しい事は分からないが、そうではなかろう。数百年に一度起こる地震による被害数と、毎日の様に各所で起こる火事や交通事故などの被害数、どちらが多いのだろうか?

日本全国各所の地下を横断する活断層やプレート。大地震が起これば、耐震性を高めた建物であろうがひとたまりも無い。そもそも地盤そのものが保たない。地震そのものに建物が耐えられても、津波や火事が起こればひとたまりも無い。インフラが止まれば、家が残っても、人は生きてはいけない。超巨大地震が起これば建物自身が耐えても、それ以外の理由で人は生きてはいけなくなるのだ。東日本大震災での被害で、地震の揺れが直接建物に及ぼした被害よりもそれ以外の要因(津波、地盤変動、がけ崩れ、火事、そして原発など)による被害の方が何倍も多い。

建築基準法が震度6強~7までしか無い事は、建物自体の強度だけこれ以上あげても意味が無いという国の考えを表していると想像出来る。又、耐震強度をもっと上げた法律を作ると、家の価格が上がり、その上、建築基準法や確認申請も複雑になり、経済活動が大きく低下し、国も建築業界も大変困る事になるのでそんな法律は作らない、という側面がある事も容易に想像出来る。

特定の物事のみへの執着は、全体のバランスを損ねる。 構造・耐震への配慮に関しては、まずは現実の最大値(震度6強~7)を理解し、その最大値に沿った法律や基準を誠実に履行する事が現実的に出来得る事なのだが、左記にも書いたようにそれさえもなされていないのが現実である。どんな立派な制度も法律も、美意識や誠意を持って活用しなければ「絵に描いた餅」となる。


「 5.経営者と現場監督 」

「地震にはこの金物やこの材料が最適です」といくらCMで叫んでも、設計者が誠実な図面を作成し、適切な金物を選定しても、現場にそれが反映されなければ意味は無い。図面を見ながら適切な位置に金物をビスで止めるのも、その金物がきちんとした商品かどうか箱から出して最終確認するのも、現場の作業員だ。 そして作業員が適切な作業を行っているか、現場は毎日適切に動いているか、確認・指示するのは現場監督の仕事である。 一般的に現場監督さんは、きちんと日々の職人さんの作業を確認・チェックしているのでしょうか? 答えはNOである。

皆さんは、自分の家の現場監督さんに何日に一回、現場に行って欲しいだろう。「えっ、毎日行くんじゃないの?!」という方もいらっしゃるかもしれない。私の知っている限り、同業他社様の現場監督、よく現場に行く方で週に1回、平均して3週間に1回、行かない人で2ヶ月に1回というところだろう。えっ、そんな頻度で、きちんと現場のチェック出来ているの?と思われるでしょうが、答えはもちろんNOである。

現場監督が何故、あまり現場に行かないのか、その理由は簡単である。会社から求められていないから、である。企業は人件費を削りたい。凄く丁寧に、心を込めた現場管理を求めていない。クレームの来ない程度の現場管理で良い。企業にとっては、多くの物件を同時にこなせる監督さんが、良い監督である。決して口には出さないが、多くの企業の「経営方針」がそうなのである。 現場監督が現場に行かない代わりに、書類や写真などがあり、現場は適切に管理されているかの様なシステムは存在するのだが、やはり何事も、最後は「人」である。現場監督がいない現場では、やはり手抜き工事が横行する。すぐに次の工程で塞がれてしまうので、手抜き工事は人目に触れない。そして、監督と職人のコミュニケーションも産まれない。職人が「意気に感じて」行う仕事が皆無となり、淡々とした「やっつけ仕事」のみとなる。現場監督が職人に求める事は、クレームの来ない程度の仕事内容と、早さ、それと安価である事になる。経営者の考え方が現場監督の行動基準を作り、それが作業員選定の根拠につながる。

上記に「誠実で有能な設計士のいる会社」が重要だと記した。 それに加えて「誠実で有能な経営者現場監督」も必要なのだ。

ここまで読んで頂いた方々から、「そんな、設計者/経営者/現場監督、が同居する会社かどうか、どうやって見分けるの?」という質問を頂くだろう。見分け方は無い。HP、パンフレット、営業マンのセリフ、全ての広告媒体は、その企業の良い所しか言わないから。強いて挙げるならば「縁」。そして、ここまで読んで頂いた方々は、もうすでにその「縁」をお持ちである
豊かな経験のみが人の「見る目」を養う。裏はハリボテだが表面だけ綺麗な看板に誤魔化される事無く、最後は「人」であるという事に気付いている方だけが、その「縁」を有効活用出来る。



2016.11号

優秀な現場監督とは?!

その業界の中にいる者の常識と、その業界の外側にいるお客様の思惑の差異は、どんな業界でも存在する。建築業界でもその様な差異は当然存在する。例えば「優秀な現場監督」とはどの様な人材だろうか。

お客様側から言えば、自分の家を愛してくれて手塩に掛けて現場管理を行ってくれる。/お客様の身になって相談を受け付け、要望を事細かいに聞いてくれる。/現場に毎日の様に足を運び、各下請業者が適切に作業を行っているか現場の確認を行ってくれる。/近隣とのコミュニケーションを適宜取りながら健全に現場を取り仕切ってくれる。等であろうか。

では、一般的な住宅会社の会社や上司にとって優秀な現場監督とはどの様な人材だろうか。その現場をスムーズに処理する為に、余計な要望が出ない様に進めて行ける。/クレームに対する処理能力が高い。/出来る限り多くの現場数をこなしてくれる。/工期を短縮し早急に引渡し、経費を削減する。/下請の業者を泣かしてでも自社の利益を増やす。等であろうか。

ある住宅会社の営業担当者と話す機会があった。その会社はCM等でも目にする有名住宅メーカー。その会社の現場監督は、1人で30物件をこなしている。なので、それぞれの物件の住所も内容も把握していない。現場に足を運ぶのは、地鎮祭や建前や打合せ等、お客様が現場に来る時だけ。いかに規格外の要望を減らすかが営業の仕事。出来る限り早く契約・着工に持ち込み、出来る限り早く引き渡す事しか考えていない。と胸を張って!話してくれた。

「家を創る」。施主のあなたのピュアな熱意と同種の気持ちが、それを請け負う会社や担当者にあるであろうか。大学出たての頼りないお兄さんに出来るほど、建築や住宅は簡単なのだろうか。綺麗なパンフレットやCM。立派なモデルハウス。お客様の不安を煽り、自尊心をくすぐる巧みな企業イメージ戦略。そんな物は何一つ信用出来ない事を建築業界の中にいる私は知っているが、建築業界の外にいる方々は、悲しい事に、あまり知らない様である。→  当社のシステム「最大の特徴」


2016.11号

店舗併用住宅

「今は子育て時期や修行中だが数年後には」とか、「今は勤めているが何だかこのまま勤めていくのが窮屈になってきた」とか、「今はやっていないが昔やっていたあの職業に未練がある」とか、「ご主人の定年退職後に第二の人生として」とか。そんな物語から始まり、小さい店舗併用住宅を創るというケースがある。

自分のお店を持つ事は本当に夢があって、実現出来れば幸せですね。なんと言っても、家が店の横や上にあるのだから、通勤時間は限りなく0であり、それだけ時間を有効に使う事が出来る。合間で家事も出来るし、業種によっては自分の子供が店にいても良い。急な雨でも洗濯物を取り込める。予約制の業種であれば時間が読めるので、日々の買い物や子供の送り迎えにも行ける。子育てしながら仕事が出来ればそれだけ育休期間の短縮になる。旦那様のお店でももちろん良いのだが、こう書き進んでいると、やはり奥様の独立開業にお勧めなのであろうか。子育てや家事をこなしながら、家と併用で自分の店を持ち、仕事を行う。

良い事だらけの店舗併用住宅だが、売上が順調に行きローンを返せて行けるかが懸念事項だろう。独立開業して5年で85%が倒産するという統計もあります。今の御時世、独立開業なんて皆の反対は当然である。

ここで1つ耳寄り情報。
店舗併用住宅の店舗部分の工事も含めて住宅ローンで融資を受けられる金融機関が存在します(これは大変珍しい事らしいです。ご興味のある方は当社までお問い合わせ下さい♪)。普通の金融機関であれば、住宅部分の工事しか住宅ローンの融資は受けられない。住宅ローンで無ければ、短期間の返済期間になり(5年~7年程)、一ヶ月当たりの返済金額が上がってしまう。魅力ある事業でも開業当時はお客様が付いていないので、開業当初が経営的に厳しい。魅力が認知される間もなく経営が行き詰まってしまう。店舗部分も含めて住宅ローン融資を受けられれば、30年~35年程の長期の返済となり、一ヶ月当たりの返済金額が少なく、開店当初の売上が少なくとも大丈夫。ゆっくり開業して、徐々にお客様を増やして行くやり方が可能である。

家は家で、店舗は別敷地でいう考えももちろんある。そうなると店舗の工事費は短期の返済となるし、賃貸の箱を借りてリフォームしてお店にした場合は、店自体の家賃や駐車場代が建築費以外に掛かる。土地を買い、その土地に独立店舗を新築すれば別だが、土地や箱が賃貸であれば、いつまでも賃料を支払い、それが自分の物になる事は無い。店と家は離れている訳なので、通勤時間は掛かるし、家事や子育てとの両立はなかなかに困難である。

そして、そんな美容室併用住宅「包まれた家」が完成した。従業員はスタイリストの奥様1人のみ。現在2才と1才のお子様。今春から2人共、保育園に預けて、奥様が産休明け仕事復帰と同時に独立開業。旦那様は別業種で、サラリーマン。その旦那様の名義にて、上記に記載したとある金融機関で、店舗部の工事費も含めて住宅ローンにて融資を受けられました。


店舗併用住宅は、どの工務店でも作るだけなら可能ですが、魅力的な物を作る事はなかなか難しい。店舗には店舗、家には家のノウハウがある。両方のノウハウがあり、どちらも魅力的に創り、それを使い勝手の良い様に結合させる事は、皆さんが想像する以上に特殊な技術です。特に店舗は魅力的に創らないとお客様に来て頂けないし、業種毎の特殊な使い勝手を理解し設計しなければ、使いにくい店舗になってしまう。
既存住宅の一部をリフォームして店舗を創りたいというケースもありますが、リフォームだからどの工務店でも出来ると考えるのは大間違い。既存部分のあるリフォームの方が難しい場合もあります。
当社は新築もリフォームも、住宅も店舗も経験させて頂いて来ました。店舗の看板やサイン、家具やメニューを含めて、正直、この分野は大得意です♪。(「shop」ページ

人生の時間の大部分である「住む時間」と「働く時間」。それが同居する事の贅沢さ、豊かさ。それ故、それを豊かに実現する事の困難さ。お子様が子離れした後、後悔の無い様に。仕事も家庭も豊かに、頑張り過ぎずに手に入れたい方、ご相談下さい♪。


2016.11号

ビルトインガレージ BIG

駐車場の屋根の有る無し、既製品か否か、非常に悩ましい問題ですね。ガレージはその創り方により、建物全体の見た目に大きく影響するだけで無く、その機能により家の魅力に大いに関わりますので、当社では重要項目だと考えております。

当社は外構工事(ガレージは外構工事の一部)も一体の工事として請負わせて頂きます。同業他社様は外構工事が別途の場合が多いので、その場合、ガレージも別途となる。外構&ガレージが別途工事の場合、既成品のガレージ屋根がほとんどです。屋根があればそれで良いのであれば結構ですが、既製品のガレージ屋根は住宅本体とデザインのバランスが悪くなり、味気なく、美しさに欠けると思いませんか。又、既成品の屋根は、住宅本体の屋根と重ねて設置する事が難しく、ガレージから玄関に行く際にどうしても屋根の無い部分が出来てしまい、玄関に到達するまでに雨に当たる事になるのも重大な欠点。諸事情で既成品の屋根にせざるを得ない場合は別にして、当社は出来る限り、住宅と一体になったビルトインガレージ=BIGをお勧めしております。

家族玄関・駐輪場・物干場が一体になったBIG。 格子の奥には露天風呂♪。
1台駐車の多目的BIG
庭先に取って付けた様に既製品の物置が置いてある住宅を多く目にします。なので、BIGは、建物との一体的デザイン性向上はもちろんの事、外部収納や物干し場を合わせて多機能型に。雨が降ってもBBQや日曜大工が出来たりと、家と外部の距離感が近づきます。自転車やベビーカー、玩具、カッパや傘、長靴を乾かしたり、夏はビニールプールを出したり。駐車台数分全てで無くとも、重い買い物袋を持った奥様の車1台分だけでもBIGに。「たまには雨もいいよね♪」と、生活が豊かで、大らかになります♪。

シャッターで仕切られたテラス・庭と一体利用出来るBIG。豊かな外部収納併設。


2016.11号

中古&リノベーション

昨今、売りに出される中古住宅が増えている。今後も増加し、又、価格も下がっていくであろう。家族環境は変化する。世間及び個人の経済状況も変化する。20年後、世界・経済・自分の仕事・夫婦・子供達、どうなるかは誰にも分からない。長いローンを組んだ為、人生の軌道修正が困難となる話を耳にする。

~とある家族の、こんな物語 ~
35才夫婦、小学校前の子供2人。新築住宅を建てたかったが予算の都合で、土地付き中古住宅を購入。最低限のリノベーション設計施工をT社に依頼。リフォームでは無くリノベーション。狭く仕切られた壁を撤去し、大空間を確保。最低限の水廻り、南側に大型サッシ取付も依頼。T社のリノベーション工事以降は、自分達で出来る範囲は日曜大工&友人で、わいわい楽しんで行う。どうせ子供は家を汚すし、大らかに細かいことは気にせず。子供達の成長に合わせて家も日曜大工で変えていく。すくすく、自由に朗らかに育った子供達は独立して行く。
その時夫婦は60才でまだまだ元気。5年後の旦那の定年退職を期に、夫婦で小さい喫茶店をやりたいと思い始める。そんな事を考えるなんて、35才の時は思いもよらない。中古住宅だったので、もちろんローンも終わっていて、その代わりに蓄えがあり、旦那の退職金と合わせて、今の住宅を解体し、小さい店舗付きの平屋住宅を新築する事とする。子供達は独立しているので、居住部分は狭くても大丈夫。
この設計施工も30年前の工事からお付合いの続いているT社に依頼。生活費程度は喫茶店で稼げるし、家と店舗がつながっているので、仕事の合間に家事も出来る。常連客達も一緒になって孫の面倒を見てくれる。豊かな第二の人生の始まりである♪

日曜大工  イメージ写真。
失敗したって大丈夫!。 汗をかいた分だけ愛情が 深まり、大事にします。

新築住宅を創る事が駄目な事では無い。不透明な将来。長いローンだけが明確。今、新築住宅必要だろうか?と考える事は意味があるだろう。「家創り」が目的では無い。「あなたとあなたの家族の幸せ」が目的です。家は幸せの為の道具でしかありません。背伸びせず、予想出来る範囲の投資でも良いのではなかろうか。
ちなみに上記の架空の物語に登場するT社は「taoyaka」です。当社はリノベーション工事も大得意です♪。(「reform」ページ



2016.07号

先に工務店選定を!

土地がある程度決まってから、又は土地の契約を済ませた上で、工務店探しを始める方がいらっしゃる。「気に入った土地があるのだが、至急、不動産屋さんに返事をしなくてはならない。大至急、図面と見積りを作ってくれないか」という依頼を突然受ける事がある。非常にバタバタした状況となり、そんな状況では適切な判断が難しくなる。これは大いなる損失である。もちろん土地が決まっていないのに工務店と契約する事は出来ないので、「土地が決まったら家創りを依頼する第一候補の工務店」を決めておく方が良い、という意味である。それにはこんな理由がある。

理由1。良い土地は早々に仮契約まで進めないと、他の人に取られてしまう。決まった工務店があれば早々に土地の相談が出来るので、土地の決断までの時間が短縮出来る。
理由2。土地は契約後、すぐ支払いが始まる。今のお住まいが賃貸の場合、土地契約後、新しい家に引っ越すまで2重の支払いとなる。なので、家の引渡しまでの期間をなるべく短くしたい。土地契約後すぐに着工する為にも、工務店を先に決めておく事は大変な時間短縮となる。
理由3。理想の家に即した敷地探しが行える。 この利点が最大の利点である。皆さん、カバンを購入する時を思い出して頂きたい。そのカバンを誰が使うのか、何を入れるのか、どういう状況で使うカバンなのか等といった、求める「機能」をショップに行く前に考えませんか? どんな家がいいのか先に考え、その家の内容に合わせて土地を選定すべきだ。あなたの希望の形を決めた後、その形に即した土地探しをした方が、あなたの希望がより良い形で実現する事は明白である。
理由4。工務店との信頼関係が深まる。誰であれ、早めに相談されたり、信頼されたりすれば嬉しい。「土地が決まる前から相談してくれたお客様」には特に愛着が湧くのは必然である。

土地選定の前に、工務店選定を行う利点はご理解頂けたと思う。 しかし、ただぼんやりと「あの工務店がいいな~」と思っているだけでは駄目である。上記にある様に、あなたの希望を敷地選定に反映する為には、希望の家の形を決めておく必要があるので、土地が決まっていない段階で、工務店と密な打合せを行い、形や機能、予算の相談をしておかねばならない。土地は決まっていないので、一般的な敷地形状を仮定し、その中に希望を盛り込んだ家の図面を描いて貰い、概算予算まで貰う。あなたの希望の家の為に、どんな敷地条件が良いかのアドバイスも聞いておき、それを敷地選定の際に活かす。
工務店選定の為には、どんな予算で、そんな計画が出来るかが重要なので、敷地選定の前だろうが後だろうが、突っ込んだ話し合いや、やり取りはいつかは必要になってくる。 ある程度の工事費が分かれば、土地と合わせての総額の目安も立ち易く、土地選定の判断材料になるばかりか、銀行との融資相談にも大いに役立つ。

上記の様な話は、「量産型住宅販売会社」ご希望の方には当てはまらない。その様な会社はどの様な敷地であろうが、決まった形の家を敷地にぽんっと置くだけなので、敷地を有効に使うとか、希望に添ったオリジナルなプランニングとかの発想がそもそも無いのでどんな敷地でも同じである。数パターンを組み合わせるだけの、見せかけだけの自由設計工務店も同様である。

敷地が決まっていない状況では、親身になってくれなかったり、仮想プランを描いてくれなかったりする工務店も多数存在し、その様な会社ごとの姿勢はモデルハウス訪問やHPだけではうかがい知れない。 会社の外見だけでは無く、内情を知るための一歩踏み込んだ相談や依頼は、工務店選定において、大いなる判断材料となる。
家創りのプロであり、「あなたの家を豊かに創りたい」と思っている真の味方に、なるべく早く巡り合い、信頼関係を深め、土地選定を含めた様々な相談を行う事は、非常に心強く、有益な事だと思うのは私だけだろうか。


2016.07号

敷地条件

「敷地を選ぶ前に工務店を選定し、敷地の相談を行った方が得である」と書いてきました。それでは、具体的に、敷地条件が建物にどんな影響を与えるか、ほんの一例だがご紹介しておく。 当社は、家のデザイン的な事よりも、まず先にどんな家に住みたいかといった「家に求める機能」を論じる事が大切であると、事ある毎に発言しています(もちろんデザインも大切だが)。
「家に求める機能」を考える事は、工務店選定及び土地の選定に繋がっていく。この機能をないがしろにし、家の見た目(デザイン)ばかりに目が行き、後々後悔する事が大いにある。この機能という領域は、建築の知識の無い方々にはあまり普及しておらず、きちんとした設計者で無い場合、皆さんの家創りに反映されない可能性が高い。(当社の「豊かな機能」

多くのモデルハウスは、実際の方位とは関係無しに、南側接道の設定で建てられているらしい(下図参照)。リビング/ダイニング/子供部屋などの為の大型サッシ、玄関、庭、テラス等、見た目が華やかな物が南側に並び、来場者の目を引く為らしい。しかし、この場合、南側の採光確保の為の大型サッシは南側の道から丸見えなのはご理解されているでしょうか。夜は宅内が明るいために特に見える。見られてもOKという方なら良い。理解されているかが重要。もちろん庭もテラスも丸見え。プライバシーを確保する為に、1年中カーテン閉めっぱなし、ひどい時は雨戸シャッターまで閉めっぱなしの南側接道の家を見かけませんか?!。

同業他社様のモデルハウスに多い南側接道の平面計画。
道から庭・テラス・リビング・ダイニングが丸見えになります。

プライバシー確保、南側採光を両立するなら、南側接道より東西接道の方が有利である。これ基本ですが、知っていましたか? これは家の機能のほんの一例です。デメリットを隠して購買意識を高めるだけの広告媒体に騙されてはいけません。求める機能を整理し、具体的なプランに落とし込み、それに即した敷地選定を行う事がいかに重要であるかの一例である。
もちろん南側接道でも、優秀な設計者であれば豊かな家の計画は可能ですのでご安心を♪。


2016.07号

MODEL  HOUSE

かなり以前から時間を見つけてはコツコツ取り組んでいた事が、完成した。図面と模型だけの計10種類の「MODEL HOUSE」である。

固定条件A:一般的な造成団地にありがちな四角い敷地を設定。
固定条件B:一般的にご希望の多い諸室の構成を設定。
固定条件C:当社のお勧めする「豊かな機能」を設定。
ここまでは、全て同じ条件。ここからがケーススタディー条件。
ケース1:接道方位が北・南・東西の3方位の違い。
ケース2:ビルドインガレージ(BIG)が0台、1台、2台の違い。

こういった条件での考察である。結果、なかなかの出来だと自負している。出来栄えが良いとか悪いとかでは無い。敷地条件の違いにより、見事に違う形になった事が嬉しく、手応えを感じる。 量産型住宅では敷地ごとの違いが家の形に反映されないのでこうはならない。家は「買う」でも「選ぶ」でも無く、敷地条件を読み、工夫し、ご家族の夢や希望を詰め込み、沢山の紆余曲折を経て「創る」物だと再確認させて頂いた。
又、当社のお勧めする 「豊かな機能」はなかなか難関が多く、それらを苦労しながら美しく取りまとめたという、手前味噌な満足感もある♪。


実際の家の計画と、今回の「 MODEL HOUSE 」は条件が違う訳 で、この通りの家が出来る事はあり得ない。お客様のご要望される諸室の構成も違えば、求められる機能も違う。 では、この様な検討が意味が無いかと言えばそうでは無い。
今回この様な検討を行ったのは、「当社のお勧めする機能を全て盛り込んだ住宅が、接道方位の違いでどの様な変化を起こすのか明確にしたかった」からである。その目的から言えば、今回の検討は大変有意義であり、結果は大変興味深い物であった。
この検討が、これから家を考える方、敷地を探そうとしている方の参考になる事は言うまでも無い。書面では説明し尽くせないので、皆さんにも実際、図面や模型をご覧頂きたいので、お気軽にご連絡頂きたい。絶対に参考になります♪。


2016.07号

断 熱

近年の技術力の向上に伴い、隙間風を発生させる木製窓からアルミサッシに替わり気密性も格段に向上し、ガラスもペアガラスになり、断熱材・外壁材の性能も一昔前に比べて格段に進化し、照明器具もほぼLEDになり発熱量も格段に少なくなった。その様な技術の進歩を受けた現在の一般的な断熱工法を丁寧にきちんと施工すれば、断熱の程度としては十分であると考えている。そして何より、日本の建築の最重要項目「南側採光&南北通風」を確保するきちんとしたプランニングを行う事が、断熱の議論より優先すべき事だと考える。(当社の「豊かな機能」


この手のキーワード、なんだか色眼鏡で見てしまいます。 「耐震」を始めとして、「断熱」「省エネ」「メンテナンスフリー」etcは、同じ様な住宅を量産している大手住宅販売会社等のCMで大変多く耳にする言葉です。昨今のエネルギー問題、地震問題から消費者の不安を煽り、あたかもそれが家創りの重要項目ですよ!と消費者の思考を誘導していると感じられる。「南側採光&南北通風」を実現出来る設計者がいない会社、もしくは同じ形を量産したいが為、毎回違うプラン等は考えたく無い大手住宅販売会社の、陽当りも風通しも悪い家には断熱は重要項目です。 その様な家は「断熱に力を入れないと暑かったり寒かったりして駄目ダメな家」とも言い換えられませんか?!。

もちろん、きちんとした家の機能を盛り込んだ上での断熱性能向上という議論は大いに結構である。一般的なグラスウール断熱材以外にも、吹付け断熱材や、今流行の外断熱工法もあります。
これらの材料や工法、工事費UP以外にも様々な注意点がある。 「当社は◯◯断熱です!」という風に、その断熱材を使えば良い、という物ではありません。適材適所を検討し、適切に、効果的に使用すべきです。家の機能の議題は、断熱以外にも数多くあります。
何事もバランスと優先順位が大切です。「これさえあればOK!」という魔法のアイテムは、家創りには存在しません。一点集中の議論やセールスには要注意です。あなたにとって本当に大切な事、優先すべき事を間違わずに、議論を進めて頂ければ幸いです。



2016.04号

基本中の基本!

「南側採光」「南北通風」は日本の家創りの基本中の基本である。
という事は一般の方でもほとんどの方が知っている要素だと思われるが、周りを見渡しても、きちんと「南側採光」「南北通風」が確保されている家がなんと少ない事か。「えっ、私が間違っているのか?」と疑ってしまう程である。

高温多湿な日本では、長く伸びた軒先にて、夏の太陽を遮断し、南北に窓を取って通風を確保し、冬の低い太陽の光を南側から確保します。太陽の光は室内の明るさ確保はもちろん、朝の自然な目覚め効果を高め、自然と同化した体内時計を作り上げます。 又、日本の多湿な気候の中で、建物・衣服・寝具等を乾燥させ、殺菌します。 北側、西側に面した部屋は、冬は寒く、朝になっても陽が当たらない為に目覚めも悪く、夏もなんだかジメジメしています。子供部屋や主寝室がこの様な状態が多く、朝気持ちよく起きられません。太陽が昇れば自然に目覚め、太陽が沈めば自然に眠くなる。そんな自然なリズムを太陽光が作ってくれます。断熱効果を高めれば外気温の遮断は可能ですが、太陽光は入ってきません。外と中を遮断する考え方だけでは豊かな住まいは出来ません。

長い軒先・南側採光・南北通風を見事に融合させた、 日本建築の大発明「縁側」

では家のどの部屋に「南側採光」「南北通風」を確保するべきかお話します。 皆さん「居室」という言葉をお知りでしょうか?「居室」という言葉は建築用語で、「継続してよく使う部屋」の事です。住宅では、ダイニング・リビング・キッチン・子供部屋・主寝室です。対して、あまり継続して使用しない非居室は、廊下・玄関・洗面所・浴室・トイレ・物置です。建築基準法でも「居室」は人が豊かに生活する為に、各種の規定が有ります。ですので当社では、全ての「居室」を「南側採光」「南北通風」としたいと考えております。(当社の「豊かな機能」


2016.04号

傾斜地に建てる

フラットな平野はすでに売れ、建物が建てられている。そんな敷地の多くは都会であり地価も高い。津波が怖い人間は海や川沿いを避けてどんどん山を目指す。そして、山を削り、木を倒し、自然環境を破壊し、広大なフラットな敷地=団地を造る。必然で当然な思考回路。悪いとは言わない。建物の工事費はフラット敷地の方が当然安くて簡単。しかし山の団地は土地の造成を行っているので、当然土地代は高くなっている。

傾斜地に住みたい・地球環境をなるべく破壊せずに、地面にへばりつくように建てたい・ただ単に団地が嫌い・山や海や川を望みながら住みたい、そんな方もいらっしゃる。普通の住宅販売会社はそんな敷地は嫌がる。又は傾斜地をフラットに造成して普通の家を建てる。当社は、そんな傾斜地、お客様を避けたくは無い。

傾斜を利用しながら建てる場合の多くは、鉄筋コンクリート造(RC)の出番となる。何故なら、建物が傾斜地の横土圧(地面の横からの圧力)を受ける為に、木造や鉄骨造では困難だから。横土圧と敷地の段差をRCにより解消し、その上に安価な木造を乗せると、RCと木造の混構造住宅が出来上がる。それが今回、見学会を行った「浮かぶ家」だ。この混構造という手法により、この敷地条件の中で、平屋と、全居室南側採光を実現した。つまり混構造により傾斜地に建てられるだけでなく、プラン・建物形状の選択肢も大きく広がったのである。



2015.03号

C R 考察

CR = Child Room = 子供部屋。 子供部屋をどう創るか? 
この議題はなかなかの難題です。 近年、簡単に子供に個室を与える事に疑問を持つ方が増えてきました。不景気の影響もあり、大きな家を創る事はなかなか困難。小さい部屋を沢山作り、その為、共用部のダイニングやリビングも狭くなり、なんだか窮屈な家になってしまう事もしばしば。 又、家の間取りが子供の教育・人格形成に影響しないか?!という問題提起もあります。

ある方は以下の様に考えます。 子供はある程度大きくなれば、家を離れる可能性が大きい。就職すればきちんと独立して、親はある程度の援助を行うが、1人で社会の荒波を泳ぐ訓練を行うべき。いずれ独立する子供の為に仕切られた個室を創ってしまうと、後々使いにくい個室が溢れてしまう。 そもそも、壁やドアにて隔離された「子供部屋」なる物が一般住宅に現れたのは戦後であり、それ以前は、家の内部は障子や襖等の、薄い可動建具に仕切られ、1つの部屋を食事・団欒・就寝空間にフレキシブルに変化させる事が可能な日本家屋に住んでいた。薄い建具は、他者への配慮・遠慮・空気を読む等の、日本人独特の気質を形成する要因にもなり、強く一体感のある家族形成に繋がる。

ある方は以下の様に考えます。 子供も一人の人格であり、きちんとしたプライバシー・独立性を与える事が重要。この場合、子供の独立性も確保出来る一方、子供が個室に籠れば、両親も静かに過ごせるという利点もある。 個室にて、子供は独立心を養い、強い個人となる。

色々な考え方があり、なかなかの難題ですね。何事も決め付ける事は出来ません。今現在のお子様の年齢・性格、ご家族の生活スタイルにもよるでしょう。

引戸により仕切られた子供室。引戸を開ければ12畳の部屋に。

大きな収納の上に勾配天井と組み合わせたロフトを設けた子供室。

さて皆さんはどう考え・どう感じますか?
この議論、子供部屋の前に、「家族とは?!」「子育てとは?!」等の議論に発展します。なかなかやっかいな議題ですが、一度ご家族で話してみたら如何でしょうか? 子供部屋を考える事は、家族像を考える事にも繋がるかもしれません。

子供達が楽しく・朗らかで・健やかでない家は、その他がいかに立派であっても、家創りに成功したとは言えません。 「子供達の笑い声が響き渡る家」を皆さんと一緒に考えたいと思っています。 


2015.03号

無垢材  VS  集成材

集成材
断面寸法の小さい木材(板材)を接着剤で再構成して作られる木質材料、の事。
同サイズの1本ごとの強度は無垢材よりも集成材の方が高いが、コストも上がる。

木造建築で、構造躯体を構成する木材において、無垢の材料を使用した方がいいか、もしくは集成材の方がいいのか、という議論があり、以前、お客様からも質問を頂きました。 このご質問、難しい事でも、心配する事でもありません。 結論から言いますと、「あなたの信用出来る設計者及び施工者様からの提案をよく聞き、よく相談して下さい!」が答えです。

とあるご物件の構造材。当社は適材適所にて無垢材と集成材を使い分けます。

無垢材も集成材も一長一短あります。建物形状・屋根形状・あなたの敷地の状態・材料の優劣・予算などを総合的に考察し、有能な設計者や施工者は、あなたに適切な提案をするでしょう。
「当社では全ての構造材に集成材を使用しています。凄いでしょう!」という宣伝内容の工務店がありますが、意味が分かりません。一般の方からみると、集成材使用=強い家、なのでしょうか?。全くの間違いです。極端に強度の高い場所を作ると、その場所に地震力が集中し、その場所が崩壊しやすくなります。家全体でバランスよく地震に対応する必要があります。不要な材まで集成材にすると全体のコストアップにも繋がります。

どうして、極端で、耳障りの良さそうなフレーズや、不安を煽る様な内容で営業をするのか? 建築や設計が、それほど単純な物であれば楽なもんです。知識や経験が必要な総論が出来ないので、誰でも言える偏ったセールスポイント(極論)に持って行こうとします。構造・断熱・防水・耐久性・耐候性等、多くの議論がありますが、何事もバランスです。何かにいびつに偏った考え方は、どこかにしわ寄せが生じます。全ての極端な話にはご注意下さい!。


2015.03号

賃貸テナント&住宅

ひょんな事から、腐れ縁の友人の物件の相談を受けました。 3階が友人家族の住居、1階・2階が賃貸テナントスペースの鉄骨造3階建ての低層のビル。一般的な住宅の有り様とは少し違いますが、これも住宅計画の1つです。
友人としては賃料を稼がなくてはいけない訳で、どうしても1・2階の賃貸テナントスペースがメインとなり、住居スペースの3階がないがしろになりがち。出来る範囲の尽力を注入し、借りたくなるテナントスペース、豊かな住居スペースを実現出来ればと思います。
と、なかなか面白い平面と立面が浮かんで来ました。建築のボリューム的に、立面のプロポーションがボテッとしてしまう事をいかに予算を掛けずに解消するかがキーです。両側面は近隣ビルに囲まれている為、正面側のみの立面模型を3種類、勢いで創ってしまったので、ご覧下さい。細かい説明は抜きで、貴方はどれがお好みでしょうか?

賃貸ビルは、業種指定をしない場合はどんな業種の店子さんが入られるか、事前には分かりませんし、店子さんも出たり入ったりします。強すぎるデザインは業種によっては抵抗感を抱く可能性もありますし、あまりにシンプルであっては人目を引きません。キラリとした印象を周囲に与えながら、多業種に合わせられるフレキシブル性のある外観デザインが求められます。
店舗と住宅では最終的な目的に違いがありますので、今回の計画では、予算・デザイン・優先順位等、バランスが大切ですが、お客様や建築に対する「愛・熱意」が多くの事を解決する調味料である事は間違いないと思っています。


2015.03号

建築業界/変化の中で

ここでは、戦後及び高度成長期以降、急激に変化しつつある建築業界の中の一業種に焦点を当てて、その変化の内容をお伝えしたいと思います。

「 左官 SAKAN 」

左官屋さんが急激に減っています。 左官とは、ドロドロしたモルタル等をコテ等で塗っていく工種です。昔は、左官屋さんは左官しか行いませんでしたが、現在の左官屋さんはタイルを貼ったり、コンクリートブロックを積んだり、外構を行ったりする会社さんが多いと思います。 「左官しかしない!」という左官屋さんは食っていけなくなりました。それほど左官を行う建築現場が減っています。
昔は、住宅建築の現場に出入りする業種の中では、大工さんに並ぶ花型業種でした。内壁も外壁も多くが左官により作られ、もちろん土間床等もそうです。現在は、内部の壁はほとんどクロス仕上げ、外壁はサイディングや鈑金、塗装仕上げが主流ですね。
なぜ、左官が減ってきたのか?  ①やはり多少コストが割高。②仕上がりの程度が職人の力量に大いに左右される。出来栄えだけで無く、ヒビ割れや剥離のクレームの対象となるリスクがある。③施工が天気に左右される。養生期間が必要。工期設定が困難。④周囲をきちんと養生しなくてはならない。⑤他の外壁材に比べて、耐候性・防食性に劣る。

この写真は、当社外壁(大壁左官仕上げ)です。
真っ白ですので、汚れ防止の為、左官後に光触媒トップコートを塗布してあります。

なかなか曲者の左官ですが、大変魅力的な工法です。何とも言えない親しみ・優しくどっしりとした量感・偽物には出し得ない風合い・高級感。
最近は、耐候性も高く、ヒビ割れしにくく、意匠性の高い材料も数多くあり、人工的な材料だけでは無く、建物の一部だけでも左官を取り入れて、ゆったりとした穏やかさを加えてみるのも是非是非お勧めです。
すっすっ、シャッシャッと、左官屋さんがコテ一本で、美しく仕上げていく様は何とも楽しく、美しく、毎回見とれてしまいます♪。



2014.09号

学び・基本・真似る

つい先日、ある超有名住宅メーカーの設計担当の方とお話している際に、私が「御社の〇〇という住宅はコルビュジェっぽいですね」と言うと、その方は「コルビュジェって何ですか?」とおっしゃいました。私は愕然としました。

どんな業種でも、偉大なレジェンドが存在します。今の時代に多大な影響や功績を残した、伝説の先人達です。凄く分かりやすい例を出すと、サッカー界でいう、マラドーナ・ペレ・ジーコ、日本のプロ野球界でいう、長嶋茂雄・王貞治という偉人達です(もちろん一例です)。
現在の住宅建築に多大な影響を与えた偉人という分類だと、フランクロイド・ライト、ル・コルビュジェetc が頭に浮かんできます。

人はある事を習ったり学んだりする過程で、「真似る」事を行います。又、その道で努力を重ねてある一定レベルのプロになると、偉大な先人達の教えに立ち返る事も必要になるでしょう。私の学生時代では、それがライトでありコルビュジェでした。
現在の建築学科の授業でも、もちろんライトやコルビュジェの名前は出てくるはずです。時代の変化による流行りや廃れはもちろんあるでしょうが、ライトやコルビュジェは偉人であり、基本なのです。プロサッカー選手がマラドーナを知らないとか、プロ野球選手が王貞治を知らないとか、有り得ません。

大企業が、特に住宅を、組織やルールやプロトタイプやコンピューターによる「システム」にて設計を行える様にしました(決して非難している訳では無い)。ライトやコルビュジェなんかを知らなくても、独自性や、オリジナリティーや、設計者の深い考察や思慮等は無くとも、きちんとした設計の修行をしていなくても、なんだか住宅の設計担当・営業担当が出来ちゃう「システム」を作り上げました。

正しい、間違いを論ずるつもりはありません。
「システム」と「個人の能力」のどちらが優れているとか、どちらが社会に必要だとかを論ずるつもりもありません。ただただ私は、誰もが社名を知っている大手住宅メーカーの設計担当者が、コルビュジェを知らない事に、愕然とし、そして、少し悲しくなるばかりです。。。。。


2014.09号

「椅子貼替え」

インテリア設計・施工。
ある和風カフェの椅子の生地提案&貼替えをご依頼頂きました。 当社は店舗、インテリア、置き家具等の、提案・デザイン・施工も、積極的にお請けさせて頂いております♪。
既存の生地は、大人しいベージュ色。 店舗はモダン和風な構えですので、滅多に採用しないですが、少し古典的でセクシーで大人っぽい柄物を、勇気を出してご提案させて頂き、ご採用頂きました。


うん、いい感じ~♪。 シンプル・モダン・和風・木調・・・etc、色々な空間にハマる生地です。いい出会いです♪。
インテリアのみのご提案の場合と、建築とインテリアのトータルでのご提案の場合とでは少し思考が違います。インテリア単独のご提案の場合は、廻りを取り巻く建築環境に対して、インテリアがどんな役割を帯びているのかを見出す事が大事です。
いずれにせよ、建築とインテリアはまとまってこそ美しくなります。 プロのご提案にご期待下さい。 又、お客様が家具屋さん店頭で定価にてご購入される値段より、業者間値引きにて購入される方が多分、安価になりますよ~♪。


2014.09号

「共存し繋がる家」

このお宅の敷地はご先祖様代々の敷地です。
そして、解体する既存住宅とは別棟の「蔵」が建っています。新しい家は・予算の都合から大きなものは建てられず、この既存の蔵が邪魔になる訳ではありません。残せる位置に建っています。

当初、お客様は「この蔵は何もせずこのまま放置し、将来、解体する」と仰りました。しかしこのままではお世辞にも美しい状態ではありませんし、このまま何もせずにいると、近年、朽ちてしまうと感じます。当社としては、限られた予算の中で、今回この蔵の外部だけでもリフォームし(内部は将来に行う)、将来的には収納にしたり、子供部屋やご主人の趣味室にしたりする事を見込んで、残す事をお勧めし、ご了解頂きました。
建て主のご両親も、実はこのご先祖様からの蔵は残していきたいというお気持ちがあったそうで、大変喜んで頂いております。

今回の計画、準防火地域という金銭的には悪条件の地域の中、総施工面積35坪の2階建て新築住宅、既存の蔵の外側リフォーム、外構、全て含んで(カーテンやエアコン・照明器具・諸経費etc)、お客様のご希望予算に添えます様、計画進行しております。
大変厳しい条件ですが、お値打ち価格で・美しく・機能的で・温かく・楽しい家を目指して、お客様と一緒に、ワイワイガヤガヤ、楽しく奮闘中です♪。乞うご期待♪。


2014.09号

建築業界/変化の中で

ここでは、戦後及び高度成長期以降、急激に変化しつつある建築業界の中の一業種に焦点を当てて、その変化の内容をお伝えしたいと思います。

「木製造作建具」
日本建築の内外の壁は、木製建具が多く使用されて来ました。
ふすまや障子・板戸等により、高温多湿な日本の風土の中で、通風を確保し、又、家の内部では、建具を開閉させ、狭い空間を多くの用途に転化する事の出来る変化自在なフレキシブル性を兼ね備える建築様式でありました。

戦後、鉄やガラスの出現により、まずは、外部に面した木製建具がアルミ製のサッシに変化しました。シャッターの出現により雨戸も減りました。
そして、個人主義や合理主義・プライバシーといった西洋の思想の広まりと共に、家の内部には閉ざされた壁が増え、建具は出入口にのみ限定され、ふすまや障子が激減しました。
カーテンやブラインドといった遮光装置の普及により、さらに障子の出番は減りました。

そんな激減した木製建具は、更に近年「既成品」化されつつあります。職人が1枚1枚造作していた木製建具は、既成品で量産され、色やデザインやサイズの載ったカタログから選ぶ時代になりつつあります。前記したアルミサッシも同様です。
全ての量産品の最大の長所は価格でしょう。同じ物を機械で大量に量産する既成品は、価格に秀でています。では、見た目・デザイン面で、既成品と造作品に違いはあるでしょうか?! 
私は、同じサイズで同じ色の物でも、美しさの違いが「多いにある!」と思っています。
その最大の理由は、既成品木製建具と、既成品アルミサッシの高さ寸法が合わないという事です。両方共に既製品ですから。なので、空間ががちゃがちゃしちゃって美しく無い。
更に、既成品の額縁関係は、ほんの少し、角が丸い。なのでシャープさに欠けます。その為、既成品木製建具の空間は、何となくぼんやりした、「緩んだ」印象になってしまいます。
「安ければ何でもいい!」という方であれば別ですが、木製建具は「造作」で創りたいな~と思っています。


当社の木製造作建具。
額縁は戸先しか無く、真っ白な枠に防音ガラスをはめ込み、
出来る限りすっきり見える様に工夫しました♪